脚本家・吉田玲子が語る、『きみと、波にのれたら』湯浅政明監督との2度目のタッグで描いたもの
「キャラクターの味付けに今回は気を配りました」
ーー吉田さんから見る湯浅監督の魅力はどこにありますか?
吉田:一番最初に湯浅さんの作品に出会った時に、すごく面白い線の絵を描かれる人だなと。今では、その湯浅さんの絵をそのまま活かせる自由奔放で発想力の豊かな画面作りがされていて、そこが湯浅さんの一番の魅力ですね。その映像表現に対して、現実世界のラブストーリーがどういう風に描かれるのだろうと私も未知数なところがありました。
ーー湯浅さんもコメントで「愛らしい2人のラブストーリー」と書かれていました。このラブストーリーに対してどのような意識で望まれたのでしょう?
吉田:幸せの中にも何か不安とか迷いがある女の子が、一度自分と向き合って再生するお話で、単なるラブストーリーではなくその線をすごく気をつけて書きました。登場人物それぞれの再生の物語としても観れるよう意識しました。
ーー観ていてすごくいいシーンだなと思ったのが、港が、真夏に海辺で熱いコーヒーとタマゴサンドイッチを作るところで。
吉田:監督は、港がすごくこだわる人というか、頭でっかちで、ひな子とは対照的な人にしたいと考えていたみたいで。「外でコーヒー豆を挽いちゃうような人」というのは湯浅さんのアイデアですね。タマゴサンドもその場で作るようにしたいとおっしゃったのもそうです。「形から入りがちな人」というキャラの印象を前半でつけたかったんです。港を含めた男の子側は、結構湯浅さんの意見が入っています。港の方に監督が投影されているんじゃないでしょうか。
ーーでは女の子側の造形を吉田さんは意識されたんですか?
吉田:そうですね。ただ配分が大事で、ひな子がずっと甘いのも個人的に辛いなと思っていて、毒というかスパイスになるキャラクターが欲しく、洋子が出てきました。ちょっと強いかなと思ったんですけど、そのまま行きました。料理のようにキャラクターの味付けに今回は気を配りましたね。
ーー脚本段階でキャストは決まっていたんですか?
吉田:片寄さんだけがほぼ決まりな状態で、他の方は全然決まっていなかったです。片寄さんの歌っている映像や出演作品をプロデューサーからいただいて、この人が港なんだというのは念頭に置きながら脚本書いたところも少しあって。片寄さんの持っていらっしゃる雰囲気、オラオラ系ではなくて、ソフトな柔らかい感じでガテン系じゃないというところは反映されていますね。
ーー一方でひな子のキャラクターはどのように作り上げたのでしょう?
吉田:港とは対照的に、まだ自分の道も見つけられず考えるよりも先にサーフィンに行っちゃうような、後先考えないような女の子が初めて自分と向き合うというキャラクターを考えていました。恋人を失うようなつらい出来事がなくとも、自分の道を決めるときにしっかり自分と向き合わないと見つからないことってあると思うので、自分が何をしたいのか、どこに行きたいのか、そこから逆算して、そうではない女の子に持って行きました。