乃木坂46 山下美月、西野七瀬とは異なる演技の魅力 『電影少女』で“自身を客観視する力”を発揮

『電影少女』山下美月、西野七瀬との違い

 そして山下は、乃木坂のエースとして一時代を築いた西野七瀬から『電影少女』を引き継ぐことになる。とは言え、西野が演じた明るいビデオガール・天野アイとは違い、山下演じる神尾マイは悪のビデオガールというダークヒロイン。ビデオを再生した主人を癒すという役割は変わりないが、アイは主人を一生懸命応援する無邪気なタイプであるのに対し、マイは目的のためなら相手の心にあるダークサイドを巧みに操り廃人になるまで追い込んでいく。

 決して直接その行為は見せないが、相手を寝取って虜にしていくその姿はエロティックで、乃木坂メンバーがここまでやるのかと視聴者を惑わしていく山下の小悪魔っぷりが見事だ。アイはプログラミングされたビデオガールがいかに人間味を出していくか、マイはいかに人間味を消すかという、演技の違いも面白い。感情が無であればあるほど、その間に見せるふとした表情に悲しみや慈しみが伝わってくるところが、マイの魅力であり、山下の演技の深みだと考える。

 西野の場合はアイドルやモデルとしてのキャリアがある分、女優としての固定された色がなく、毎回その役になりきろうと頑張り、キャラクターに親しみが湧いてくるようなイメージでアイ役にハマっていった。一方の山下の演技は、自分と演じるキャラクターを重ね合わせていくようで、内面にある人間味を視聴者に気づかせていく、西野とはタイプが違う役者だと感じる。

 また今回のマイ役に関して山下は「普段、私が他のお仕事をしている中では見せない表情とか、仕草、いろんなものをさらけ出していて。あんなに怖い表情とか、人を罵倒するようなこともないですし。それを無でマイちゃんはやっているので、人間にはない怖さを自分の中から出す、とういうことを試行錯誤しています。殻を破って、この作品に臨んでいる」(「BARFOUT!」vol285より)と語っているが、それは2年前の「BUBKA」のインタビューの、「アイドルとして活動する時は、もう一人の自分を作って、違う人間に乗り移ってるみたいな感じ」というコメントにも共通する部分がある。女優としてもアイドルとしても、同じ感覚で自分を客観視できるからこそ、今回のマイがハマリ役となったのではないだろうか。

 アイドル活動と同じく、きっちりと分析して全力で挑む姿勢が女優業でも活かされ、若干19歳にして結果を出している山下は、今後どんな役でも演じられる器用な女優になる素質がある。山下が、その持ち前の演技力を活かして、乃木坂46のエースになる日もそう遠くはないだろう。今見ておくべき女優の一人だ。

(文=本 手)

■放送情報
木ドラ25『電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-』
テレビ東京系にて、毎週木曜深夜1:00~1:30放送
BSテレ東にて、毎週火曜深夜0:00~0:30放送
原作:桂正和『電影少女』<集英社文庫(コミック版)>
出演:山下美月(乃木坂46)、萩原利久、武田玲奈、黒木ひかり、新條由芽、大下ヒロト、久保田康祐、柾木玲弥、桃月なしこ、甲斐翔真、三浦誠己、森岡龍、小松和重、岡田義徳、戸次重幸
脚本:喜安浩平、山田能龍、高野水登
総監督:関和亮
監督:真壁幸紀、湯浅弘章、山岸聖太、川井隼人
チーフプロデューサー:大和健太郎(テレビ東京)
プロデューサー:五箇公貴(テレビ東京)、倉地雄大(テレビ東京)、巣立恭平(ROBOT)
制作:テレビ東京、ROBOT
製作著作:『電影少女 2019』製作委員会
(c)『電影少女 2019』製作委員会 (c)桂正和/集英社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/videogirl2019/
公式Twitter:@videogirl2019

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