『腐女子、うっかりゲイに告る。』クイーンの楽曲が物語の要に フレディと重なる金子大地の苦悩
物語と密接にリンクするクイーンの楽曲
しかし、そう上手くことが進むはずがないのである。第2回のクライマックス。観覧車のなかで、紗枝に告白された純は、大音量で流れ出すクイーンの「アイ・ウォント・イット・オール」をバックに、その内面で「僕はすべてが欲しい。男に抱かれて悦びたい。女を抱いて子を生したい。誰かの息子として甘えたい。自分の息子を甘やかしたい。欲しい、欲しい、欲しい」と叫びながら、ゆっくりと紗枝に近づき、唇を重ねてしまうのだった。そう、「自分が同性愛者だと明かさずに彼女と付き合う」という、ファーレンハイトに提示され、「外道だね」と自らコメントした、そんな最悪の行動を彼は選び取ってしまうのだ。このあたりから、瑞々しい青春グラフィティのようだったこのドラマの雲行きは、早くも怪しくなってゆく。
そして第4回。「女を抱けるゲイもいる」という可能性に賭けて行為に及ぶも、やはり上手くいかなかった2人は、どこかギクシャクした関係性のまま、紗枝の友だちと連れ立って、温泉施設に出掛けることになる。そして、そこで純は、「僕は、自ら命を絶つことにした」という、ファーレンハイトからのメールを受け取ることになるのだった。あまりのショックに紗枝のもとを離れ、施設内を彷徨する純。“黒の女王”の行進に遭遇し、彼女に導かれるように“地獄”への道を歩み始める……クイーンの「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」の歌詞世界さながら、あてどなく彷徨する純の前に現れたのは、同じ温泉施設に居合わせた彼の年上の恋人・佐々木誠(谷原章介)だった。「ねえ、マコトさん。僕たちみたいな人間は、どうして生まれてくるのかな」。思いつめた表情で、そう問い掛ける純をそっと抱き寄せながら、「僕にはジュンくんが必要だよ」とやさしく語り掛け、純の唇に自らの唇を熱く重ね合わせる誠。しかし、遠くからその様子を見詰めている人物がいた。紗枝だ。「どういうこと?」、「この人、誰?」、「なんでキスしてるの?」。純を真っ直ぐに見詰めながら問い掛ける紗枝。けれども、純はそこで、最悪の言葉を吐いてしまうのだった。「いいじゃん別に。好きなんでしょ、ホモ」。