『シャザム!』は笑いあり涙ありのホームドラマに その魅力はスケールの小ささにあり!?

 サンドバーグ監督はYouTubeにアップした短編がワンの目に留まり、『ライト/オフ』(2016)として長編化が決定、デビューした人物だ。その後も『死霊館』シリーズのスピンオフ、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)を監督するなど、完全にワン一派の人間である。製作を担当したピーター・サフランも『死霊館』に、美術のジェニファー・スペンスも『ライト/オフ』『死霊館』、そして『インシディアス』(2010年)でワンと組んでいる。つまり本作は幽霊屋敷映画を何本も作り続けてきた、いわば幽霊屋敷映画の達人たちが手がけているのだ。悪い意味で「もしかして自分にも起きるのではないか?」な映画を作っていた人間たちが、そのノウハウを巧みに使い、良い意味で「もしかして自分にも起きるのではないか?」な映画を作ったともいえるだろう。

 実際、怖いシーンは本当に怖い。悪役のDr.シヴァナ(マーク・ストロング)が暴れるシーンは流血こそ少ないが、ホラー映画そのものだ。そして、サンドバーグ監督は「家族」というテーマに何かこだわりがあるようで、彼の監督作は『ライト/オフ』も『アナベル 死霊人形の誕生』も、孤独な少年少女が主人公だった(特に『アナベル~』は『シャザム!』のダーク版のようだ)。それぞれ結末は異なるが、孤独を「恐怖」とすること、そして他人のために戦うことを「善」として描く姿勢は一貫している。

 『シャザム!』は紛れもないスーパーヒーロー映画だが、同時にワン一派の幽霊屋敷映画の流れを汲んでいるといえる。俗に「恐怖と笑いは紙一重」というが、本作は恐怖と笑いを同居させたうえ、さらに1人の少年が「孤独」という「恐怖」を乗り越えるヒューマン・ドラマとして完成されている。長年の経験で培われた確かな技術と、それを応用して新しいことに挑戦する姿勢は、最高の形で結実した。『シャザム!』は新たなスーパーヒーロー映画の傑作として、きっと末永く愛されることだろう。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『シャザム!』
全国公開中
監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
出演:ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、ジャック・ディラン・グレイザー、マーク・ストロング
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:http://shazam-movie.jp/

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