『12か月の未来図』監督が語る、多文化時代の教育の重要さ 「自分の過ちに気づくことも“学び”」

『12か月の未来図』監督インタビュー

深刻なテーマにユーモアを

ーー演技について、経験のない子どもたちとどんな話をしましたか?

ヴィダル:まず一人一人に、この子はこういう演技をさせたら面白いんじゃないかと考えました。みんな個性がたっていて面白い子たちだったからね。それに、リハーサルもたくさんしたから、撮影現場に入ってからもリラックスして撮影に挑めたんじゃないかな。

ーー生徒の一人のセドゥくんが中心となって物語が進んでいきますが、最初の教室での様子と、終盤のシーンでは変化していることがその表情からよく伝わってきました。

ヴィダル:ありがとう、僕もそう思うよ。彼の佇まいや話し方、あまり頓着しないような、飄々としたところが、ほろりとさせられるところもあって素晴らしいんだ。

ーー思春期の男の子らしい振る舞いも可愛らしかったです。

ヴィダル:コミカルなところは最初から入れようと思っていたよ。同級生の女の子とのやりとりや、フーコー先生が答案を返すシーンなんかもね。扱っているのがいかに深刻なものであってもそこにユーモアを取り入れる。それが人生なんじゃないかと僕は思うよ。僕は映画館で観客が笑ってくれたり泣いてくれたりするのが大好きなんだ。

 僕が今回の作品で伝えたかったのは、思い込みがゆえに変わらない人もいるだろうけど、フーコー先生は自分は間違っているんじゃないかと思い直す。その気づきに到達する姿を描きたかったし、自分の過ちに気づくことが、“学び”のひとつなんじゃないかと。この映画を見て、今どんな教育の方法が可能なのか、どんな知識を子どもたちに伝えればいいのか、考えるきっかけになったら嬉しいよ。人に何かを教えるためには、高圧的な態度ではなく、好意的でポジティブな態度をとるべきだし、そうすることで子どもたちに自信を与えられると思うんだ。

(取材・文=若田悠希)

■公開情報
『12か月の未来図』
岩波ホール他全国公開中
監督・脚本:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル
出演:ドゥニ・ポダリデス
2017年/フランス/フランス語/107分/シネスコ/5.1ch/原題:Les Grand Esprits/英題:The Teacher/日本語字幕:岩辺いずみ/G
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
(c)ATELIER DE PRODUCTION - SOMBRERO FILMS -FRANCE 3 CINEMA – 2017
公式サイト:12months-miraizu.com

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