『ハード・コア』と表裏一体をなす『BLUE団 in DAWN』 山下敦弘×山田孝之の信念がここに

『ハード・コア』と表裏一体をなす『BLUE団 in DAWN』 山下敦弘×山田孝之の信念がここに

 パッケージの発売時に、「映画本編はもちろん、付属のメイキング映像も、是非楽しんでもらいたいです」みたいなことは大概の監督や出演者が言うことだけれど、映画の公開前から監督と出演者が口をそろえて、「本編はもちろん、メイキング映像も是非観て欲しい」、「なんなら、メイキングの上映会もやりたい」と言って、実際に映画が公開中だった昨年の12月、監督及び出演者の同席のもと、映画本編と合わせてメイキングの上映会を行ったというのは、割と前代未聞な話なのではないだろうか。山田孝之主演、山下敦弘監督の映画『ハード・コア』のことである。

 もともと山下監督が、その原作漫画である『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』(作:狩撫麻礼、画:いましろたかし)の20年来のファンであり、『山田孝之の東京都北区赤羽』(15)、『山田孝之のカンヌ映画祭』(17)などでタッグを組む以前から、自身もその漫画に感銘を受け「男たちの結末に泣いた」という山田孝之と意気投合し、いつの日か自分たちの手で映画化することを夢見ていたという、2人にとって積年の企画である本作。ちなみに同書は、今回が山下組初参加となった荒川良々にとっても長年の愛読書であり、映画化の際には「是非、牛山役を」と、酒場で山下監督と口約束を交わしていたという。つまり、今回の映画化に際して、監督及び出演者たちの意気込みには、並々ならぬものがあった……という話は、公開前から聞いていた。けれども、ここまでメイキングを推すとは、どういうことなのだろう。そこには一体、何が映っているというのか。その前に、本作『ハード・コア』のあらすじについて、簡単に説明しておこう。

決して笑い飛ばすことのできない本気さ

 「間違ってることを間違ってると言って何が悪いんだよ」。山田孝之演じる主人公・権藤右近は、世の中や人々に対して鬱々とした思いを持ちながら、都会の片隅で貧乏暮らしを送っている男性だ。彼は、自分に唯一目を掛けてくれた活動家の男・金城銀次郎(首くくり栲象)を師事し、彼の活動を手伝いながら日々を過ごしている。といっても、その主な活動は、週に一回、金城とその右腕である番頭・水沼(康すおん)と共に山奥まで出向いて行う、あるかどうかもわからない“埋蔵金”の採掘という、甚だ怪しいものではあるのだが、同じく金城の活動を手伝う精神薄弱気味の男・牛山(荒川良々)と行動を共にしながら、右近は低空飛行の日々を生きている。一方、彼の弟である権藤左近(佐藤健)は、エリート商社マンだ。兄とはまた違う意味で満たされない思いを抱えている彼は、兄のことを気に掛け、ことあるごとに兄のもとを訪れ、ときには彼の世話を焼いたりもしている。そんなある日、牛山が寝泊まりする廃工場で、放置された謎のロボットが発見される。右近によって“ロボオ”と名付けられたそのロボットと不思議な友情関係を築いてきゆく右近と牛山だが、その見た目とは裏腹に、実は“ロボオ”は高性能な人工知能を有しており……それは、右近と牛山、そして左近の運命を、大きく動かしてゆくのだった。

 怪しげな右翼団体と埋蔵金、そしてロボット……まあ、荒唐無稽な話ではある。というか、いつも真顔の右近のとなりにいる“ロボオ”の見た目からして、どう考えてもシュールだ。そう、本作を試写室で初めて観たとき、隣席に座っていた見知らぬ男性が上映後、「ふざけ過ぎでしょ……」と吐き捨てるように呟いたことを覚えている。けれども、それを耳にした瞬間、カッと頭に血がのぼり、映画の中の右近ではないけれど、思わずその男との胸倉を掴みそうになった。なぜなら、この映画の中にふざけたシーンなど、ひとつも無かったから。この映画は、荒唐無稽な設定と物語の中から、男たちの確かな孤独と悲哀を浮かび上がらせる原作漫画のテイストをそのまま実写に置き換えたような、そんな絶妙なバランス感の上に成り立った、滑稽だけど決して笑い飛ばすことのできない強度を持った映画なのだ。それにしても、なぜそんなことが可能だったのだろうか。なるほど、そのヒントは、このメイキング映像の中にこそあるのだった。

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