『大奥』には先進国における様々な課題が詰め込まれている? シリーズ人気の秘密を探る
元々、大奥はNHKの大河ドラマにもなった春日局が作ったものだ。会社で働く(部署を取り仕切る)ベテラン女性を“お局さま”と呼ぶのは、この春日局から来ている。そう考えると、女性の職場で起きる様々な出来事は、どこかで江戸時代の『大奥』とつながっているのかもしれない。
それがわかりやすく現れていたのが、2016年に二週連続で放送された沢尻エリカ主演の『大奥』(第一部「最凶の女」、第二部「悲劇の姉妹」)だ。当時の沢尻はアパレル業界を舞台にした『ファーストクラス』(フジテレビ系)シリーズで再ブレイクを果たした後で、女同士のマウンティングに翻弄される中、自分らしさを貫き勝ち上がっていく強い女を演じていた。そこでの沢尻のイメージは『大奥』にも反映されていた。
フジテレビ版『大奥』は、幕末からはじまり、様々な時代の大奥で翻弄される女性たちを描いてきた。「大奥は女の牢獄でございます」という言葉に象徴されるように、様々な理由から大奥にやってきた女たちが、将軍の寵愛を受けるために、ライバルたちとしのぎを削る。そこには醜い嫉妬やイジメもあるのだが、やがて女同士だからこそ生まれる友情が芽生えていく。
2016年度版の『大奥』では、沢尻と渡辺麻友が演じるヒロインの同性愛的な感情が描かれ注目されたが、そもそも2004年度版『大奥』の頃から、シスターフッド(女性同士の連帯)的な感触は見え隠れしていた。
女たちの絆が、将軍との恋愛や、離れ離れになった幼馴染との『ロミオとジュリエット』的な悲恋よりも重要なものとして描かれる展開は今見ても斬新で、とても現代的だ。これはシリーズを通して参加している『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)などで知られる脚本家・浅野妙子のカラーなのかもしれない。