『大奥』には先進国における様々な課題が詰め込まれている? シリーズ人気の秘密を探る
それにしても、この“大奥”というモチーフは、物語の宝庫である。
たとえば、2003年版『大奥』と、2008年に放送されて大ヒットした大河ドラマ『篤姫』(NHK)の時代背景と登場人物はほとんど同じだ。つまり『篤姫』もまた、大奥モノだったと言えるだろう。
また、漫画家のよしながふみは、男性の出生率が低下した結果、女性中心社会となった架空の江戸時代(徳川家の将軍も全員女性)を舞台に男女逆転の『大奥』(白泉社)を手がけている。こちらは、TBSによって映画化、ドラマ化されており、今も続いているSF的アイデアの時代劇だ。
SFと言えば、現在、世界中で話題となっている海外ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』には、『大奥』と近いものを感じる。
宗教テロによってアメリカに誕生したカルト国家で、子どもを産むための道具にされる女性たちの苦しみを描いた問題作だが、背景にあるのは、少子化による人口減少である。社会が子孫をどうやって残していくのか? その際に女性に対して非人道的な抑圧が降りかかるのではないか? という問題は先進国における大きな課題となりつつあるが、これはまさに『大奥』で描かれ続けてきたテーマである。
テレビシリーズの『大奥』はこれで終了だが、大奥という舞台設定は、アイデアの宝庫であるため、今後も様々なフィクションの中で形を変えて生き続けるはずだ。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
フジテレビ開局60周年特別企画『大奥 最終章』
フジテレビ系にて3月25日(月)20時~22時54分放送
出演:木村文乃、大沢たかお、小池栄子、浜辺美波、南野陽子、岸井ゆきの、鷲尾真知子、山口香緖里、久保田磨希、浅野ゆう子、北村一輝、谷原章介、葛山信吾、松坂慶子、鈴木保奈美 他
脚本:浅野妙子
音楽:石田勝範
企画:保原賢一郎、塚田英明(東映)
プロデュース:高田雄貴、大森敬仁(東映)、大西文二(東映)
演出:林徹
制作:フジテレビ、東映
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/oh-oku2019/