『劇場版 Fate/stay night』が問う“正義のあり方” 待望の第2章は原作ファンを裏切らない出来に
矛盾しているから美しい言葉
「正義の味方」という言葉は、一説によると川内康範氏の作詞した『仮面ライダー』の主題歌で初めて使われた言葉だそうだ。竹熊健太郎氏が「なぜ正義ではなく、味方なのでしょうか」と尋ねたら、以下のように答えたという。
「(月光仮面の発想は)月光菩薩という仏に由来しているんだけど、月光菩薩というのは脇仏(わきぼとけ)でね、決して主役じゃないんだ。つまり、裏方なんだな。だから“正義の味方”なんだよ。この世に真の正義があるとすれば、それは神か仏だよな。だから月光仮面は神でも仏でもない、まさに人間なんだよ」(参照:http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_b18d.html)
「桜だけの正義の味方」とはどういうことだろうか。神でも仏でもなく、一般人を巻き込む桜に正義はあるのだろうか。このセリフはある種の詭弁ではないか。しかし、詭弁だからこそ、このセリフは美しいと筆者は思う。倫理も道徳も超えた愛から生まれたセリフなのだから。「Heaven’s Feel」とは別の世界線では「抑止の守護者」という、ある種の神の代行者のような立場になってしまう士郎よりも、よほど人間らしい矛盾をはらんだセリフなのだ。思えば、父の切嗣は愛を知りながら、その詭弁を自らに許すことができなかったから破綻したのではなかったか。
正義の味方から人間へと成長した士郎の物語の結末は2020年の最終章まで待たねばならない。須藤監督がどんな結末を選ぶのか、今からソワソワと心待ちにしている。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
■公開情報
『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」II.lost butterfly』
全国公開中
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
主題歌:Aimer
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス
(c)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
公式サイト:https://www.fate-sn.com/
公式Twitter:@Fate_SN_Anime