石橋静河が語る、『二階堂家物語』での演技アプローチの変化 「鍛えていただいた現場でした」
演技と踊りは真逆のアプローチ
ーー先程のお話に少し戻ると、同じ身体表現でもダンスと芝居の一番の違いは、「声を出すこと」にあるかと思います。特に本作は外国人監督ということもあり、台詞に関しての演出はどういったものだったのでしょうか。
石橋:踊りをしているときは声を出すことがなかったので、お芝居を通して初めて自分自身の声の存在に気付いた感じがします。映画やドラマの中では、普段使っているような話し言葉ではあっても作品を通して強いメッセージを放つ言葉があります。そういった言葉を言うときに、演じる上で私にはまだまだ足りないことがたくさんあると実感させられます。一方で、アイダ監督は、声の高さや低さをコントロールするような演技は求めてはいませんでした。本当にその人物になって台詞を言ってるか、それを何よりも大事にされていました。「自分で役を作り込むことはしないでほしい」と言われていたので、その点は非常にやりやすくもありました。言語の壁はあっても、役者たちの台詞を“音”として判断しているので、アイダ監督にはすべてを見透かされているような感じもあって。演じていても何がフィクションで、何がリアルなのか、ふと分からなくなるような不思議な感覚でした。
ーー由子が恋人を初めてお父さんとおばあちゃんに紹介するシーンなど、随所に生々しいほどのリアルな空気を感じました。一方で、終盤の由子がレコードをかけて踊るシーンは非常に幻想的で素敵でした。
石橋:ありがとうございます。あのシーン“だけ”監督に怒られなかったんです(笑)。ほかのシーンでは、逐一「NO!」の言葉がありました。アイダ監督は画に関しては非現実的とも言える美しいものを求め、お芝居に関しては徹底的なリアリティを求める。相反するものを見事に成立させる手腕は本当にすごいと感じましたし、個人的にもとても鍛えていただいた現場でした。
ーー石橋さんの中で、演技に対してのアプローチにも変化が?
石橋:これまで複雑な思いを抱えた役を演じさせていただくことが多かったこともあり、ひとつの役に潜り込むような感覚でいたんです。それは踊りをやっていたときの感覚とは真逆で、踊りは潜り込むというよりは自分を拡げていく感覚。やはり、潜り込む感覚は自分自身に戻れなくなる時間があるので、非常にしんどくもあるのですが、それが役にとっては大事なんだと思っていました。でも、もしかしたらどこかでその感覚も、一歩引いた視線で楽しめるものなんじゃないかと最近は思っているんです。少し矛盾するかもしれませんが、本作のようにその役自身になることが求められるときも、“技術”としてお芝居をして、潜り込むのではなく客観的にそんな自分を観ることもできるのではないかと感じています。きっと、ずっと学ぶことばかりですが、今後もさまざまな作品に挑戦していきたいと思います。
※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記
(取材・文・写真=石井達也)
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<応募締切>
2月3日(日)
■公開情報
『二階堂家物語』
新宿ピカデリーほか全国順次公開中
監督:アイダ・パナハンデ
出演:加藤雅也、石橋静河、町田啓太、田中要次、白川和子、陽月華、伊勢佳世、ネルソン・バビンコイ
脚本:アイダ・パナハンデ、アーサラン・アミリ
エグゼクティブ・プロデューサー:河瀬直美
配給:HIGH BROW CINEMA
(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival
公式サイト:https://ldhpictures.co.jp/movie/nikaido-ke-monogatari/