韓国人女優クラウディア・キムが明かす、『ファンタビ』でナギニを演じることになった背景
「ハリウッドは変わりつつあるが、まだまだスタートライン」
ーークリーデンス役のエズラ・ミラーとはどんなコミュニケーションを?
クラウディア・キム:まだそこまで仲良くなる前に、エズラが夏至の日に不思議な集会に連れて行ってくれたんです。いろんな人に会ってご飯を食べたりするようなパーティのようなものなのかなと思っていたら、夜中に森の中を歩くと(笑)。でも、全く明かりがなかったので、とにかくエズラを信じるしかありませんでした。森の深いところまで入っていくと、火が焚かれていて、踊ったりドラムを叩いたりする人たちがいて、そこでやっと、それがサーカスだと気づきました。エズラは役作りのために私を本物のサーカスに連れていってくれたんです。履いていたDiorのスニーカーは泥だらけになってしまいましたけどね(笑)。
ーーそれは面白いエピソードですね。
クラウディア・キム:エズラは役者としても本当に素晴らしいんです。スケールがとにかく大きいし、しかも面白くてエネルギッシュでハイテンション。だけど、すごく低く落ちていくこともできる人なんですよね。パリのアパートでのクリーデンスのシーンは、エズラの演技にモンスターのようなエネルギーがものすごく満ち溢れています。これだけ献身的に演技ができる人と共演できたことはとても嬉しかったです。
ーー多くのキャストが1作目から続投となる中で、2作目からその輪の中に入るのは容易ではなかったことが想像できます。
クラウディア・キム:もちろん緊張はしましたが、新しく参加したという気持ちではなく、その空気の中にスッと入っていけるように心がけました。1作目からのキャストはみんなとてもウェルカムでしたし、セットや小道具、衣装なども助けになりました。それこそエズラは、私と彼との初めてのセットのシーンの時に、クリーデンスになりきってセットまで連れていってくれました。
ーー『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)に続いてのシリーズものの大作映画への出演となりましたが、その時の経験は今回に繋がりましたか?
クラウディア・キム:もちろんです。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は私にとって初の海外作品への出演だったので、たくさん学ぶことができました。最初はソワソワしてしまうだろうなと思っていたんですけれど、ジェームズ・スペイダー、マーク・ラファロ、スカーレット・ヨハンソン、ロバート・ダウニー・Jr.……大スターの皆さんがとても謙虚だったんです。それに、彼らのパフォーマンスが素晴らしいのは、自分たちが心の底から楽しんでいるからだと分かったんです。いつもジョークを飛ばし合って、楽しんで撮影を行っている。もちろん作品にもよりますが、暗く重たい作品が多い韓国では、どうしてもみんな真面目に役をこなしてしまう傾向があるように思います。それに気づけたことは自分にとって大きな変化でしたし、今回の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でも同様でした。あとは秘密を守らなければいけないというのも、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で学んだことのひとつでしたね(笑)。
ーー映画の中ではそこまで描かれていませんでしたが、ナギニにはまだまだ秘密がありますよね。
クラウディア・キム:私自身もまだ知らないことがたくさんあるので、皆さんにとってもそうだと思います。さっきエディ(・レッドメイン)と話をしていたんですけど、彼は次作のタイトルをもう知っているらしいんです。なので、「私はタイトルはまだ知らないけど、あのシーンのことだったら知ってるから、お互い情報交換しよう」と言いました(笑)。
ーーのちに白人であるヴォルデモートのペットになる蛇の役を、アジア人女性が演じることについては議論も呼びました。J・K・ローリングはナギニという名前の由来がインドネシアの神話からきていることを明かしながら、アジア人が演じることの正当性を説明していましたが、あなた自身はどのように考えていますか?
クラウディア・キム:そういう議論が生まれるのは大切なことだと思いますし、私は批判だとは捉えませんでした。多様性のためにアジア人をキャスティングするということではなく、必要だからその人をキャスティングする。私が信頼しているJ・K・ローリングは、公平さをすごく大切にする人なので、今後ナギニに素晴らしいストーリーを作ってくれると信じています。
ーーオールアジア系キャストで製作された『クレイジー・リッチ!』の大ヒットも記憶に新しいですが、白人中心にキャスティングされるハリウッドの事情も変わりつつあるのでしょうか?
クラウディア・キム:変わりつつありますが、まだまだスタートラインです。『クレイジー・リッチ!』は、全く新しいプラットフォームを作ってくれたので、皆で祝うべきことだと思います。ですが、西洋人がたくさんいる中に、アジア人がどう入っていくのかも考えなければいけない。私たちには、その可能性を探っていく責任があると思っています。
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
全国公開中
監督:デヴィッド・イェーツ
脚本:J・K・ローリング
プロデューサー:デヴィッド・ハイマン
出演:エディ・レッドメイン、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、エズラ・ミラー、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドルほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (c)J.K.R.
公式サイト:fantasticbeasts.jp