池松壮亮が語る、『斬、』塚本晋也監督への思い 「モノを作ること、時代への覚悟が違う」
「出演した映画がつまらないのって本当に悲しい」
ーー蒼井優さんとの共演はいかがでしたか?
池松:お互い10代の頃に出会っていたのもあって、何年かに1回は必ず会ったりするすごく縁のある女優さんなんですけど、現場でしっかり向き合ったのは初めてでした。モノを作る上でこれだけ共闘できる女優さんは見たことがないです。技術もさることながら、あの存在感はとてもじゃないけど僕は敵わない。塚本さんと蒼井さんの3人で『斬、』という映画を共有できたことは、宝物ですね。
ーー本作の撮影を通して、得たものは大きかったと。
池松:塚本さんにしても、蒼井さんにしても、こちらが感動するくらい、ものすごいものを出してくるんですよ。毎回驚かされるというか。塚本さんは俳優としてもすごく好きですね。『沈黙−サイレンス−』で塚本さんがやったことは、普通の職業俳優じゃ絶対無理です。モノを作ること、時代への覚悟が違うなと感じます。
ーー池松さんのインタビューや発言を振り返ってみると、俳優というある種の“プレイヤー”がありながら、どこか常に俯瞰で自身が参加している作品を見ているように感じます。他の俳優の方には、どんな作品であれ与えられた役を全うするという人もいるかとは思うのですが。
池松:人と違うと言われると、「あ~そうなんだ」くらいなんですよね(笑)。でもおっしゃっていることはすごくわかります。モノを作るスイッチと俳優のスイッチは違うってよく言いますが、そんなこと言ったら塚本さんなんて監督もやって、あれだけのお芝居をやられてますからね。
ーー池松さんは、元からこういう風にやってきたと。
池松:そうですね。でも、本当の最初は違いましたよ。ずっと俳優をやっていく中で、一つ上の高いところを目指そうと考えるとやっぱり何かが必要だったし、もっといい映画を自分自身が見たいと思ったら映画を自ずと考えるようになったというだけのことです。自分が出演した映画がつまらないのって本当に悲しいですからね。もちろん、俳優という仕事も放っておくと、ルーティンになるんですよ。でも、ルーティンにならないように工夫することを諦めて、別の趣味を持つとかパーソナルな人生に喜びを感じるみたいなことは、20代は少なくともなかった。だとしたら面白い場所と面白い人で、面白い映画を作っていきたいんです。
ーー『斬、』は、池松さんにとってそういう願いが叶った作品なのかなと思います。『斬、』公開後の、池松さんの展望はありますか?
池松:あんまりもう、展望とかを考えないんですよね。別に『斬、』が最後になってもいいと思ってやってますし。なんだろう......幸せになりたい(笑)。
ーー間違いないですね(笑)。海外進出は考えたりしますか?
池松:そうですね、そういうタイミングが来るかどうかはさておき、それも一つ考えていますね。国内映画を諦めたくない気持ちもありますが。
ーー役者という仕事に限らず、プライベートでやってみたいことはありますか?
池松:子育てです。
ーーそれはなにかやりたいと思うきっかけが?
池松:年齢も年齢だからじゃないですかね。もうアラサーですし、一つ自分の中で『斬、』が撮り終わって時代の区切りがついたというか。どう抗ったって平成は終わるわけですから、新しい時代に向かってどう懸命に生きていくかしか考えていなくて。だからなにしたいの? と言われるとやっぱり幸せになりたい(笑)。
(取材・文・写真=島田怜於)
■公開情報
『斬、』
11月24日(土)よりユーロスペースほか全国公開
監督、脚本、撮影、編集、製作:塚本晋也
出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
製作:海獣シアター
配給:新日本映画社
2018年/日本/80分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー
(c)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
公式サイト:zan-movie.com