ディズニースター版『glee』? 『ステータス・アップデート』はSNS時代のスクールカースト物語

ソーシャルメディアの「表面」を実現する面白さ

 「SNSは人生の良い部分しか見せない」──これは2018年には知れ渡った意見だ。Instagramのフィードを見ていると、自分以外の皆が輝かしい人生を送っているように見える。しかし、多くの人々は人生の一部を切り取って編集を加えた上でポストしているわけで、SNS上のライフスタイルが真実というわけではない。とは言っても、それでも羨みが出てくるのが人間だ。エリート体育会系にきらびやかなパフォーマー……それらが何の努力もせず手に入れたらどんなに良いだろう?

 『ステータス・アップデート』は、そのような「SNS上の表面的な輝きの取得」を実現してしまう映画だ。主人公は、ユニバースによってトップの学力、運動スキル、歌唱力を手に入れる。自然と女子にモテるようになり、男子も教師も彼を喝采しはじめる。しかしながら、周囲が絶賛するカイルの能力や結果は、本人にとっては何の努力も介していない「薄っぺらで表面的な輝き」に過ぎない。元々の学園エリートたちは、意地悪だろうと、己を磨く努力はしていた。カイルとは決定的にそこが違う。魔法のアプリに頼りつづける彼はだんだんと努力しなくなるし、周囲の人々をないがしろにしはじめる。「高校のスター」になればなるほどアプリ中毒となっていくカイルにはどのような展開が待ち受け、そして彼は何に気づくのか?

 ソーシャルメディア時代のティーン映画『ステータス・アップデート』は、これまでとは一味違った自己実現の物語へ着地する。

 余談だが、主演のロス・リンチはアイスホッケーとスケートボードの経験を持つ現役ミュージシャン兼俳優。本作ではそれらの多彩な経験を活かし、ほとんどをスタントなしで撮影したと語っている。カイルが魔法のアプリによって手に入れるスーパーな運動および歌唱スキルをリンチは地で持っているわけだ。もしかしたら、ロス・リンチこそ一番ユニバースを必要としないスター人類かもしれない。そんなリンチは、2017年、映画『My Friend Dahmer(原題)』で実在の連続殺人鬼役に挑戦し高評価を博した。『ステータス・アップデート』は、新たなムービー・スターの目撃としても楽しめるだろう。

『ステータス・アップデート』予告

■辰巳JUNK
ポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマなど。 雑誌『GINZA』、webメディア等で執筆。
ブログ:http://outception.hateblo.jp/
ツイッター:https://twitter.com/ttmjunk

■公開情報
『ステータス・アップデート』
11月3日(土)より渋谷シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国公開
出演:ロス・リンチ、オリヴィア・ホルト、ハーベイ・ギーエン、コートニー・イートン、ロブ・リグル、ファムケ・ヤンセン
監督:スコット・スピアー
製作総指揮:アダム・シャンクマン
脚本:ジェイソン・フィラルディ
配給:AMGエンタテインメント
提供:日活
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公式サイト:http://status-update.jp/

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