『フェイクニュース』二転三転する展開はどう生まれた? 脚本家・野木亜紀子が語る制作の裏側

「ドラマだからこそできることをやっていきたい」

ーー野木さんは脚本を書くにあたって取材を丁寧にされますが、二転三転するストーリーの中でどのように組み込んでいくのでしょうか?

野木:広告番号の話はセキュリティー会社の方が教えてくれました。取材の中で「お?」っとなることは結構ありましたね。ネットのことは三人の中ではわたしが一番詳しいくらいだったのですが、北野さんは報道について詳しいので助けてもらいました。報道記者だった北野さんには、記者がどれくらいの信憑性で記事を書くのかや記者なら言わないことなど……。わたしも20人くらいは会っているんですが、北野さんはさらに倍以上の数を取材していて。もちろんすべてが使えるわけではないのですが、新しい情報やリアリティに関わることに関してはメモをくれたので、できる限り脚本に組み込んでいきました。『獣になれない私たち』の間で『フェイクニュース』を進めていて、作業的には平行していた状態だったので、全部の取材に参加できなかったんです。事前取材以外にも、こういう流れにしたいからここにこういうネタが必要なのでと伝え、随時調べていただいたりもしました。ストーリーの展開上、猿滑(光石研)さんは悪口を書いていた鶴亀屋食品の親会社のテイショーフーズが、勤め先の八ツ峰製菓のライバル会社だと知らず、そんな中で悪評を流し続けていたということにしたい。それだと、お菓子会社と食品会社が参加しうるコンペが必要になるので探してもらいたい、みたいな形です。そこからプライベートブランドのネタが上がり、それに合わせての調整は必要なんですけど、基本的には「ここでここをひっくり返したいからこうする」という構成は決めて、細部を取材して詰めていきました。今回は色んな会社が複雑に絡む話なので、取材が多かったですね。堀切園さんもリアリティーやディティールにこだわる監督なので画作りにあたってもものすごく取材していて、完成作品をみたら美術や背景のひとつひとつまで細かくて感心しました。

ーー野木さんの作品には、誰かの心を必ず動かす力があります。野木さんにとってドラマにできることはなんでしょうか?

野木:フィクションの力って馬鹿にならないと思っていて、だからこそ怖いので、ちゃんと覚悟して作らないとと思っています。『フェイクニュース』の題材も、堅いドキュメンタリーやニュースだと観ないという人もドラマなら観るじゃないですか。『アンナチュラル』のような法医学の話だってドラマという形なら届く人がいる。『獣になれない私たち』の晶のように声を上げられない人がいることも、ドラマにして見せないと埋もれてしまう。こうした、ドラマだからこそできることをやっていきたいです。

(取材・文=阿部桜子)

■放送情報
『フェイクニュース』
NHK総合にて、10月20日(土)に前編、27日(土)に後編を21:00~21:49に放送 
作:野木亜紀子
音楽:牛尾憲輔
出演:北川景子、光石研、永山絢斗、矢本悠馬/新井浩文、岩松了、杉本哲太
演出:前編=堀切園健太郎、後編=佐々木善春
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:北野拓
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/dodra/fakenews/

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