西島秀俊、“支えるポジション”で生んだ『散り椿』の力強い画 岡田准一との殺陣は屈指の名場面に

 そんな彼が『散り椿』で対する相手は、類まれなる身体能力の高さに“アクション俳優”と見る向きも多い岡田准一だ。しかし西島もまた、“肉体派”としての魅力も兼ね備えた俳優である。20代の頃の作品を観ると線の細い身体が印象的であるが、役者としてのキャリア、年齢を重ねることで蓄積された貫禄、そして肉体改造で得た身体によって、役の幅は広がり続けている。

 思わずため息が出るほど四季の移ろいを美しく捉えた本作は、俳優に課せられたものが大きい。四季以上に、やはり主体となるのはあくまで武士の物語であるからだ。だが、監督(演出者)がカメラマンを務めているとあって、やはり俳優の立っている画面こそ美しく、西島と岡田の殺陣は本作屈指の名場面となっている。

 完成報告会見で、木村監督に「スピードに関して言ったら、三船敏郎、高倉健、仲代達矢、勝新太郎を上回るスピード」とまで言わしめた岡田だが、それに西島も互角に渡り合う。2人の殺陣はまるで舞のようであり、四季の美しさに勝るとも劣らない、息を呑まずにはいられないものである。前述した、キャリア・貫禄・身体、この三拍子を揃えた者だからこそ、岡田と作り出せたシーンなのだろう。

 今後は『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』や『人魚の眠る家』でメインキャストを務め、2019年公開の『空母いぶき』では主演を務める西島秀俊。その作品ジャンルは多岐に渡るが、彼の魅力はいずれも映画館のスクリーンでこそ味わいたいものである。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『散り椿』
現在公開中
出演: 岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、緒形直人、 麻生久美子、富司純子、奥田瑛二ほか
原作:葉室麟『散り椿』(角川文庫刊)
監督・撮影:木村大作
脚本:小泉堯史
製作・配給:東宝
(c)2018「散り椿」製作委員会
公式サイト:http://chiritsubaki.jp/

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