『カメラを止めるな!』『BLEACH』『斬、』など出品 多様化する国際映画祭の魅力に迫る

 また、映画祭において、大きな指標となるものが2つある。

 ひとつは、「国際映画製作者連盟」(FIAPF)という世界各国の映画製作者の権利を代表する唯一の組織の公認だ。公認されている映画祭の中には、10月25日より開催される東京国際映画祭も含まれる。

  2つ目の指標が、アカデミー賞の公認だ。アカデミー賞は、アメリカ国内の特定地域で公開された作品が選考の対象だが、例外として、アカデミー賞公認の映画祭でグランプリを受賞することで、アカデミー賞ノミネート候補作となる。国内においては、ショートショートフィルムフェスティバルと広島国際アニメーションフェスティバル、山形国際ドキュメンタリー映画祭がアカデミー賞の公認を受けている。

 アカデミー賞前哨戦ともいわれる、トロント国際映画祭も先日閉幕を迎え、閉会セレモニーでは、観客賞などの受賞作品も発表された。なぜトロント国際映画祭がアカデミー賞前哨戦とまで言われるのか? トロント映画祭の観客賞受賞作品は、『スラムドッグ$ミリオネア』『それでも夜は明ける』『ラ・ラ・ランド』など、アカデミー賞においても高い確率でノミネート・受賞しているというジンクスがあるのだ。トロント映画祭は、関係者だけでなく、トロントの普通の市民が参加する映画祭であり、コンペティションも設けない、ある意味最も「民主的」に面白い映画を決める映画祭とも言える。そのため、トロント映画祭の最高賞は、観客の投票によって決まる「観客」賞と名付けられている。

 今年のトロント国際映画祭において観客賞を受賞したのは、『メリーに首ったけ』『ジム・キャリーはMr.ダマー』などを手がけてきたピーター・ファレリー監督作『Green Book(原題)』だ。『Green Book』は、実話を元にしたコメディー作品で、舞台は、まだ黒人差別が色濃く残る1960年代のアメリカ。コンサートツアーを計画するアフリカ系黒人ジャズピアニストが、イタリア系の用心棒兼ドライバーを雇い、南部をめぐるコンサートツアーに出るというコメディー映画となっており、多様性が問われる社会の時流にもマッチした結果となる。

 ファレリー監督は、アカデミー賞や国際映画祭での賞に恵まれてきたわけではなく、今回の受賞は大きなステップアップとも言える。今回の受賞によって、『Green Book』はアカデミー賞で作品賞・脚色賞・監督賞候補、ワイルドなイタリア系男性を演じたヴィゴ・モーテンセンは昨年の『はじまりへの旅』に続く主演男優賞候補、紳士的なピアニスト役を演じたマハーシャラ・アリは、『ムーンライト』に続いて2度目の助演男優賞候補となる可能性が出てきた。

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