捉え方で評価が変わる? 『ザ・プレデター』は「ドン詰まりの男子のバカ騒ぎ映画」として満点!
ところが、これを「プレデター」ではなく、「ドン詰まりの男子のバカ騒ぎ映画」と捉えると、評価はガラっと変わってくる。上記のような問題点は重々承知の上で、それでも私がこの作品が大好きなのは、こうした「ドン詰まりの男子のバカ騒ぎ映画」が大好きだからだ。この先ロクな人生がないだろう。そもそもマトモな死に方すらできそうにない。というか、そろそろ死ぬんじゃね? そういう自覚がある人々が、命を張る理由と場所を見つけ、決死の戦いに挑む。そして実際に命を散らしていくわけだが、その顔には命がけのバカ騒ぎを堪能し、相応しい死を迎えた満足げな笑顔が浮かんでいる……私はこうした話が大好きだ。監督本人がインタビューで言及している『ワイルド・バンチ』(69年)、酒をラッパ飲みしながら最後の銃撃戦に挑む『エグザイル/絆』(06年)、消耗品を自称して戦地へ乗り込む『エクスペンダブルズ』(10年)など、この辺りの雰囲気にも近い。こうした物語が好きな方なら、きっと琴線に触れるものがあるはずだ。
とは言え本作は「プレデター」である(しかも“ザ”までついている)。なのにプレデターより人間サイドが主役で、今までのSFホラーアクションとは全然違うトーンで、おまけにイイ加減な所は本当にイイ加減である。問題点を挙げだすとキリがない。ハッキリ言って無茶苦茶だが、同時に、その無茶苦茶さにこそ魅力がある。人が面白半分で死んでいく世界で、人生ドン詰まりの男たちが、ちっぽけな良心のために次々と散っていく。その様は「ドン詰まりの男子のバカ騒ぎ映画」としては満点だ。
激辛の担々麺を食べに来たら、何処か懐かしい駄菓子――パピコとかだろうか――が出てきた。本作はそんな映画である。全く刺さらないというリスクはあるが、是非とも劇場で判断してほしい。マーケティング、ファンへの目くばせが当然となった昨今、こんなに「監督のやりたいことしかやってない」大作映画は珍しい。それだけは間違いない。なお、これは完全な余談だが、劇中でプレデターが飼っている犬が出てくる。これが非常に可愛いので、何とかしてフィギュア化して頂きたいところである。
■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。
■公開情報
『ザ・プレデター』
全国公開中
監督・脚本:シェーン・ブラック
出演:ボイド・ホルブルック、トレヴァンテ・ローズ、オリヴィア・マン、トーマス・ジェーン、キーガン=マイケル・キー、ジェイコブ・トレンブレイ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/the-predator/