今のステイサムは演技も人の頭に回し蹴りもできる! 『MEG』は役者としての総決算に

加藤よしきの『MEG ザ・モンスター』評

 ところが、結論から言えばステイサムは色々な意味でメガロドンに勝った。本作の彼はメガロドンに食われず、演技的な意味でも食われていない。作品のトーンにマッチした名演を見せてくれる。タートルトーブ監督は『クール・ランニング』(93年)、『ナショナル・トレジャー』(04年)と言った、お茶の間にピッタリ系の作品を手掛けてきた人物であり、本作も良い意味で大らかな映画だ。鮫が人を食い殺して回るが、直後にユーモアがそれをフォロー、決して陰惨な雰囲気にはならず、最後まで笑顔で楽しめる作品になっている。しかし、こうした作品のトーンは、次のことを意味している。仲間が食べられた直後に、ギャグを飛ばさなければならない。人が死にまくる中で笑顔を浮かべる、それは一歩間違えばサイコパス、観客から「人が死んでるんだぞ」と不興を買いかねない。下手な人間ドラマより難易度の高い演技が求められると言っていいだろう。そこをステイサムは突破してみせた。サイコパスではなく、筋の通ったヒーローとして、「ジョナス」という男を演じきっている。『ハミング・バード』(13年)の己の過去に苦悩する繊細な演技や、『SPY/スパイ』(15年)でのバカ演技、そして『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15年)での「弟のお見舞いに来た病院を破壊する」と言ったセルフ・パロディ的な最強キャラ演技の合体技だ。おまけに元・飛び込みの選手の過去を活かし、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)の半魚人ばりに美しいフォームで海を泳いでくれる。役者としての面で言うなら、本作は現時点のステイサムの総決算とも言っていいだろう。

 演技はできないが、人の頭に回し蹴りはできる。かつてステイサムが自分をそう評したが、今やこの表現は適切とは言えない。今のステイサムは演技もできるし、人の頭に回し蹴りもできるのだ。ジェイソン・ステイサムという“役者”の力で魅せる、夏を〆るのにピッタリの一本だ。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『MEG ザ・モンスター』
丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにて公開中
監督:ジョン・タートルトーブ
原作:スティーヴ・オルテン(『THE MEG』)
撮影:トム・スターン
美術:グラント・メイジャー
出演:ジェイソン・ステイサム、リー・ビンビン、レイン・ウィルソン、ルビー・ローズ、ウィンストン・チャオ、ペイジ・ケネディ、ジェシカ・マクナミー、オラフル・ダッリ・オラフソン、ロバート・テイラー、クリフ・カーティス、ソフィア・シューヤー・ツァイ、マシ・オカほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/113分/原題:The Meg/映倫区分:G
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
公式サイト:www.megthemonster.jp

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