ScreenXは“映画を観る”体験をさらに拡張? 大海原が舞台の『MEG ザ・モンスター』から考える

ScreenXが変える“映画を観る”体験

 もともとScreenXは、4DXと同様に韓国のCJ CGV社が開発した上映システムだ。2013年に釜山国際映画祭でキム・ジウン監督&カン・ドンウォン主演の短編映画『The X』でお披露目されると、2015年から本格的に始動。日本では通常上映のみだった『コインロッカーの女』や『新感染 ファイナル・エクスプレス』などの韓国作品をはじめ、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』や『ブラックパンサー』などのハリウッド大作、さらにはコンサート映像のODSなどで活用されている。

 もっとも、現在はまだ“完成形”にはたどり着いておらず、徐々に進化していく(もしかすると通常の映画と同様に、ゴールはないのかもしれない)過程であるといえよう。コンサート映像であればあらかじめ3面分の映像を撮影されるとはいえ、これが映画になるとそうはいかない。あらかじめ3面上映を想定した正面の画面作りがされているものと、後から付け足されたものとが存在し、何よりも作品のすべてのシーンを3面スクリーンでカバーしきれていない。重要なシーンや、映画が盛り上がりを見せるシーンで、ようやく左右に映像が登場するといったところだ。

 現状では映画のストーリーを追うことに特化しているのは正面のスクリーンのみではあるが、いずれは長編映画でも全シーンが3面で進行し、左右の画面でも物語が進行していく作品が登場する可能性も充分だろう。それどころか、あえて正面を軸にすることを保ったままで、天井にもスクリーンを配置してさらに視界を増幅するという進化を遂げるかもしれない。いずれにしても、映画を“観る”という映画の最も忠実な楽しみ方で、今後日本にも次々と導入劇場が増えていくであろうScreenX。今後、映画の技術とともにグレードアップしていく過程を見守っていくこともまた、映画ファンにとってはたまらない“映画体験”になるのではないだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■『MEG ザ・モンスター 』ScreenX上映劇場 
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場:http://www.unitedcinemas.jp/screenx/

■公開情報
『MEG ザ・モンスター』
丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにて公開中
監督:ジョン・タートルトーブ
原作:スティーヴ・オルテン(『THE MEG』)
撮影:トム・スターン
美術:グラント・メイジャー
出演:ジェイソン・ステイサム、リー・ビンビン、レイン・ウィルソン、ルビー・ローズ、ウィンストン・チャオ、ペイジ・ケネディ、ジェシカ・マクナミー、オラフル・ダッリ・オラフソン、ロバート・テイラー、クリフ・カーティス、ソフィア・シューヤー・ツァイ、マシ・オカほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/113分/原題:The Meg/G
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
公式サイト:www.megthemonster.jp

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