木村拓哉と二宮和也の組み合わせを楽しむだけではない 『検察側の罪人』の“異様さ”を解説

小野寺系の『検察側の罪人』評

 日本のトップアイドルの座に君臨し続け、主演俳優としてのキャリアも豊富な木村拓哉。人気絶頂の男性アイドルユニットに所属しながら、飛び抜けた演技力で注目され続けている二宮和也。彼らがダブル主演したのが、本作『検察側の罪人』である。当事者の二宮ですら、「この2人が共演することがあるのかと思って…」と語っているとおり、この顔合わせには新鮮な印象がある。おそらく事務所内の事情の変化もあって、いままであり得なかった共演が実現できるようになったというところだろうか。

 しかし本作『検察側の罪人』は、そんな人気俳優の組み合わせや魅力を楽しむだけの作品にはなっていなかった。主演の二人は暴力的とまでいえる凶暴で妖しい雰囲気を纏い、映画全編に漂うダークな重厚感と、ただならぬ違和感は、観客を奇妙な世界に誘う。ここでは、そんな本作を最大限楽しむために、なぜこの映画がここまで異様なものになっているのかを解説していきたい。

 本作を手がけているのは原田眞人監督だ。『突入せよ! あさま山荘事件』(2002年)や『日本のいちばん長い日』(2015年)など、重厚な映像と演出による群像劇を撮る手腕を持った監督である。それに加え、編集によって1秒、2秒といった早いリズムでカットが切り替わるというところが特徴的だ。

 本作の鑑賞中に数えてみたが、長くても1カット4秒ほどで次のカットに移るので、各シーンはかなり小刻みなカットによって構成されているということになる。それ以上に長いカットは、だいたいカメラが動いている「移動撮影」の場合である。そのような観客を落ち着かせてくれない手法は、むしろ重厚さとは逆の軽快な印象が与えられる。この相反する感覚が同居するのが原田監督作だといえよう。

 さらに一つの瞬間に登場人物たちが発するセリフが重なったりするなど、目に、耳に飛び込んでくる情報が非常に多い。観客はこれら情報を、頭をフル回転して脳内処理し続けても良いし、自分の集中したいところだけに絞っても構わない。どちらにせよそこには、ある種のライブ感やグルーヴ感が発生し、観客を作品世界のなかに引き込んでいく。

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