立川シネマシティ・遠山武志の“娯楽の設計”第31回

アメリカで話題の“映画館定額制”は日本でも始まるか? 映画館スタッフが可能性を検証

 東京は立川にある独立系シネコン、【極上爆音上映】等で知られる“シネマシティ”の企画担当遠山がシネコンの仕事を紹介したり、映画館の未来を提案するこのコラム、第31回は“映画館定額制は日本でも始まるか?”というテーマで。

 映画ファンの皆様なら『MoviePass』のことはご存じでしょう。アメリカで話題の、映画館の定額見放題(ただし1日1本。通常上映作品のみ)サービスです。なぜ2017年の夏に急に話題になったかというと、月額料金を9.95ドルにしたからです。約1,100円。破格すぎです。アメリカの入場料金は日本より安い、と言われてますが、都市部ならさほど変わりません。1500円とか、1700円とかします。にも関わらず、9.95ドルという月額料金です。場所によっては1回で元が取れるどころか得してしまう。これが話題になった理由です。

『MoviePass』公式サイト

 このニュースを聞いたとき衝撃を受けて、それ以来ずっと調べたり考えたりしてきましたので、今月と来月は映画館のスタッフという立場から考える、映画館の定額制について書かせていただこうかと。

 『MoviePass』の大きな特徴は、実はこれ、映画館がやっているサービスではないということです。どこかのチェーンがやっているわけではないので、いろんな映画館で使えるというのが大きいのです。映画好きなら入会するのに躊躇する理由がありません。これは観客視点ですね。

 映画館視点で見ると、なんで興業会社をまたいでこんなサービスが可能なのか、全然理解できません。定額制サービスの肝は、会費のはずです。その会費を別の会社が取っていて、どうして利益を出せるのか? 結論は、シンプルにして衝撃です。『MoviePass』は、劇場に対し、会員が観た分をフルプライスで支払っているのです。これなら劇場側は文句はありません。どんどんお客さんを集めてくれて、得しかないからです。だからみんな乗った、というわけですね。

関連記事