テレ朝ドラマ、新しさと古さのバランスが絶妙に 独自の作品を生み出す手法

 春ドラマは、意外な作品が面白かった。まず、今期一番のダークホースとなった『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。

 テレビ朝日のドラマというと『相棒』や『ドクターX』のような長期シリーズ化した1話完結の職業モノが人気を席巻しており、ドラマファンからすると保守的な”おっさん向け”ドラマばかり放送されているドラマ枠というイメージが強い。しかし、近年はシルバードラマ枠として『やすらぎの郷』などの昼帯のドラマを復活させたり(現在は休止中で来年再開予定)と、テレビドラマが高齢者向けになっていることに開き直ることで、今までにない独自の作品を生み出している。

 『おっさんずラブ』も昨年新たに作られた深夜ドラマ枠で放送された作品だ。この枠は今までに『オトナ高校』、『明日の君がもっと好き』を放送しており、恋愛モノの連続ドラマを放送する枠というイメージだったのだが、3本目に登場した『おっさんずラブ』は男性同士恋愛を中心に扱った異色の恋愛ドラマとして話題になった。

『おっさんずラブ』(c)テレビ朝日

 基本的には誰と誰がくっつくかで関心をひっぱるトレンディドラマ以降の恋愛ドラマの王道なのだが、いわゆるBL(ボーイズラブ)にすることで、題材は新しいがベタで見やすいという新しさと古さのバランスが絶妙な仕上がりとなった。

 また、ネットでの広報展開がうまく、イラスト投稿サイトpixiv(ピクシブ)でイラストを募集したり、劇中の登場人物・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が使っているという設定のInstagramを展開することで、本編を盛り上げた。

 『やすらぎの郷』も、実は物語自体は学園ドラマの構造を用いていて、とても古典的な作りなのドラマだったのだが、主人公を老人にして、舞台を老人ホームとすることで、今までとは違う独自のテイストを生み出していた。

 こういった古さと新しさのバランスはテレ朝ならではのものだろう。いつも同じことをやっているように見えて、実はこっそり変なことをやる、というテレ朝ドラマの独自のバランス感覚が開花したことで、『おっさんずラブ』は成功したのだろう。

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