『のだめ』から『ママレード・ボーイ』まで なぜ少女漫画映画は量産され続けるのか

少女漫画映画、なぜ量産?

 もっとも一見すると同じようなテーマの作品が、同じようなキャスティングで散見することに、日本映画界の衰退を危惧する人も少なくはないだろう。しかし、裏を返してみれば前述のスターシステム同様、日本映画の黄金期を支えた「プログラムピクチャー」が現代に蘇ったというポジティブな見方ができるのではないだろうか。

 「プログラムピクチャー」とは50年代から60年代にかけて、各映画会社が量産していた大衆向けの娯楽作品であり、人気のある俳優がキャスティングされ、明朗なストーリーテリングによって多くの人気シリーズが生み出された。娯楽性の高さから、いわゆる批評家受けする作品ではなかったにしても、映画史の一端を担った作品群として、近年再評価されはじめている作品も少なくない。

 当時と同様、少女漫画映画というジャンルの作品は、俳優だけでなく監督も複数本携わっていくケースが多い。安定したストーリー展開で俳優の良さを引き出す三木孝浩、コメディー要素が加わると才能が爆発する英勉、豊富なキャリアで鍛え抜かれた技で安定した作風を貫く廣木隆一に、画面作りへのこだわりが伺える新城毅彦など、同じような内容の作品だからこそ、それを作り出す監督たちの個性が十二分に浮き彫りにされていくのだ。

 もちろん映画はオリジナリティーに富んだ立派な“物語”を構築するという側面と、“技術”の進歩を見せつけるという側面を持ち合わせている。しかしそれと同時に、作り出す監督たちの“作家性”によって映画史が存続してきたこと、そしてその作品が作り出された“時代”の生の姿を記録する媒体としての側面を持ち合わせていることを忘れてはならない。少女漫画映画がキラキラと輝いているのは、将来の映画界を見据えた希望がそこにあるからということなのだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『ママレード・ボーイ』
4月27日(金)全国ロードショー
出演:桜井日奈子、吉沢亮、佐藤大樹、優希美青、筒井道隆、谷原章介、檀れい、中山美穂、寺脇康文、藤原季節、遠藤新菜、竹財輝之助
原作:『ママレード・ボーイ』吉住渉(集英社文庫〈コミック版〉)
監督:廣木隆一
脚本:浅野妙子
音楽:世武裕子
製作:映画「ママレード・ボーイ」製作委員会
制作プロダクション:プラスディー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)吉住渉/集英社 (c)2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/marmaladeboy/

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