イケメンは崩してなんぼ! 4つのパターン別に1月クールドラマを振り返る

パターンC:そこまでやるか!? とことんダメ男を熱演

『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系)の山田涼介/北沢秀作役
『トドメの接吻』(日本テレビ系)の山崎賢人/堂島旺太郎役

 最も落差の激しかったのがこの2人。山田涼介は月9『カインとアベル』(フジテレビ系)でクラシカルなお屋敷に住む財閥の次男をシリアスに演じていたが、まさかセルフパロディのような役柄を日テレ土曜枠でやるとは! 毎回『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)風のイントロとともにショックを受けて顔を崩し、泥棒となって目出し帽を被りまくった捨て身ぶりに拍手。最終2話で実は名門・北沢家の子ではなかったことが分かり、本当の家族とこたつでくつろいで綿入り半てんを着ている姿には思わず爆笑してしまった。

山崎賢人『トドメの接吻』より (c)日本テレビ

 『トドメの接吻』の山崎賢人は、これまで少女漫画原作の映画で千本ノックのように王子様役を演じ続けてきたことを逆手に取るようなホスト役。ラブホで上半身裸になるシーンも頻出し、これまでのイメージを打ち破りたいという本気度を感じさせた。ターゲットの女性を口説くときのあまーい顔やヘラっと笑ってクズ男の本性を見せる表情から、肩を落としただらしない歩き方まで、この役を楽しんで演じていたことがよく分かる。終盤、真実の愛を知ってからの感情のこもった表現も、それまでのギャップがあったからこそ胸を打った。

パターンD:女子的ルックスで美人力開花

『海月姫』(フジテレビ系)の瀬戸康史/鯉淵蔵之介役
『女子的生活』(NHK総合)の志尊淳/小川みき役

瀬戸康史『海月姫』より (c)フジテレビ

 『海月姫』で女装男子を演じた瀬戸康史はとにかく美しかった。原作コミックのイメージには映画版の菅田将暉の方がつり目気味で合っているのだが、くらげドレスの下からのぞかせた美脚も含め、体重を落としてフィジカルにこの役になりきった。役柄としては女装好きだが、性的指向はヘテロ。そんな女装男子とヒロインが結ばれるなんて、まさに恋愛ドラマの文明開化や!

志尊淳『女子的生活』より(写真提供=NHK)

 それに対して『女子的生活』の志尊淳は、外見が女性的で心も女性、しかし恋愛相手としては男性ではなく女性を選ぶというメンタル面が難しい役どころだった。同時に『トドメの接吻』でもストーカー気質のゲイを演じていて、子育て中の母親世代としては「戦隊ヒーローのレッドがこういう役を演じる時代になったんだなぁ」という感慨もひとしお。4月スタートの朝ドラことNHK連続テレビ小説『半分、青い。』ではまたもやゲイ役を演じるので、当分、志尊淳から目が離せない。

 女装男子は性的マイノリティの役でもあるので、一概に面白がってはいけないのだけれど、見た目の意外性と楽しさがあるし、設定上も新しいドラマの可能性を示してくれたのではないかと思う。

 こうして見てきても1月クールは、刺激的だった。対して来たる4月クールは、ゴールデンタイムのドラマの半数近くが刑事ものと推理もの。キャラクターとしてもこれまであった造形が多く、“新しいなにか”を見せてくれるかどうか? そこは挑戦作と言える月9『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)や『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)などに期待したい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

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