菊地成孔の『ゆれる人魚』評:懐かしの<カルト映画>リヴァイヴァルとしての『ゆれる人魚』

菊地成孔の『ゆれる人魚』評

余談:少々前に、あの『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の監督が作った

 『パーティで女の子に話しかけるには』(17)という作品が封切られた。こちらは(まあ、英国、という文化的認知度の高さもあるけれども)世界中の誰が見てもはっきりと1977年の物語で、音楽は時代考証性に重きが置かれている。音楽だけではない、この作品は、77年のロンドンに○○○(自粛)が来ていたら? という映画で、英国の時間の止まりっぷりを大いに活用し、ほぼ完璧な77ロンドンパンク・カルチャーの再現を見せる、しかし、こちらも堂々たる「<カルト映画>という亡霊」とするのに、全く吝かでないどころか、一瞬先でこっちが公開されたんで、こっちのが「カルト映画という亡霊(音楽が主役)」のパイセンですらあるのである。

 ちゃんと全てを再現しているのに? エル・ファニングという「ごちそう」がメインディッシュなのに? 前作は誉れ高い名作なのに? 何故? どこが「貧しい」わけ? もちろん、登場するパンクスたちの個人所得ではない。ご興味がある方は、本作(『ゆれる人魚』)と併せ、何らかの方法でどちらも鑑賞されることをお勧めする。というか、半年後に二本立てでしょ普通。

(文=菊地成孔)

■公開情報
『ゆれる人魚』
新宿シネマカリテほかにて公開中
監督:アグニェシュカ・スモチンスカ
出演:キンガ・プレイス、ミハリーナ・オルシャンスカ、マルタ・マズレク、ヤーコブ・ジェルシャル、アンジェイ・コノプカ
提供:ハピネット
配給:コピアポア・フィルム
2015年/ポーランド/ポーランド語/カラー/DCP/92分
(c)2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE
公式サイト:www.yureru-ningyo.jp

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