映画館の売り物は“映画”ではない? 独立系シネコン・立川シネマシティの考え方

映画館の“売り物”はなにか?

 具体的な直近の例を挙げると、1月5日(金)から公開になる『キングスマン:ゴールデン・サークル』があります。前作『キングスマン』は映画ファンならば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と並んで2015年を代表する作品の1本でしょうが、興収は10億に届いていません。もちろん公開規模、R15+指定であることを考えたら十分なヒットですが。

 このあたりの作品が、シネマシティが注力すべきものとなります。『キングスマン』を気に入っているお客様は、リピート率が高く、他の映画も良く観に行っている方で、より作品を深く楽しもうと音や映像のクオリティにお金を払ってくださいます。

 ですので、シネマシティでは新作続編公開前に『キングスマン』のリバイバル上映を仕掛けました。12月23日(土)から2週間です。

 公開当時に比べ、超高級スクリーンに張替え、音響設備も飛躍的に向上させた劇場での上映で、高いクオリティでお贈りできます。しかも1月5日は2作連続鑑賞できる時間組み。

 実は1作目と今回の『ゴールデン・サークル』では配給会社が異なるため、まま手間が掛かる企画ではありましたが、それを惜しむ選択肢はありません。作るべき「時間」と「空間」がはっきりしているからです。

『キングスマン』(2015)【極上爆音上映】リバイバル告知ページ

 それは、作品世界に深く入り込み、日常から解放される時間と空間。

 重要なことはすべて作品の中にこそ存在すると信じ、付け加えるのではなく研ぎ澄ますこと。

 作品世界に飛び込もうとする時の障がいを限りなく取り去っていくこと。

 映像機器、音響設備、座席選び等の映写設備から、作品選び、作品の見せ方の企画、宣伝方針などのコンテンツに関わること、さらに料金制度、予約システム、入場方法などの運営まわり、さらには館内装飾、併設カフェでの作品関連メニュー提供などの副次的なエンタテイメントまで、どういう「空間」と「時間」にしていくかの方針さえ揺るぎなく確定できれば、常識に囚われすぎることなく、ブレなくより良いものに磨き上げていけるはずです。

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 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では、冒頭の問いが再び、ジョーダンから放たれます。

 今度は仲間たちにではなく、彼のセミナーを受けにきた多くの聴衆に向かって。

 彼は壇上から降りて、ジャケットからペンを取り出すと、聴衆のひとりひとりに声を掛けていきます。

「このペンを私に売れ」

「これは素晴らしいペンで…プロ用です…」「これで人生の思い出を書きとめれば…」「このペンは書きやすく、私は大好きです…」

 僕は自分の仕事に問い続けます。こんな売り方をしてやいないかと。

 この仕事は本当に“Write your name on this piece of paper.”になっているかと。

 果たして映画ファンを、需要のなかったはずの、思いもよらない場所にまで引きずり込んでいけるか?

 You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)

(文=遠山武志)

■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。

『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:https://cinemacity.co.jp/

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