瀬々敬久監督が語る、『ヘヴンズ ストーリー』から7年の変化 「“自由”が大切な時代になっている」

『ヘヴンズ ストーリー』監督インタビュー

 メジャーとマイナーの区別はない

――『ヘヴンズ ストーリー』以降も次々に新作を撮られていますが、メジャー大作『64‐ロクヨン‐前編/後編』もトータルの上映時間は4時間になりますし、内容的にも『ヘヴンズ ストーリー』の延長中に見える部分もあります。

瀬々:言ってしまえば復讐劇みたいなところもあるし、そういう意味では『64』でも渦中に入って作るみたいな思いで撮っている映画ですね。『ヘヴンズ ストーリー』以降は色んな作品をなるたけ区別せずにやろうとしているんですよ。メジャーだからどうだとか、マイナーだからとか言わずにスタンス的には区別せずにやって来ているというのはありますね。

――スタッフの方を見ても、『ヘヴンズ ストーリー』と『64』をまたがって手がけている方も多いので、規模に違いはあってもスタッフワークとしては連続性があるのではないかという気がしますが。

瀬々:『ヘヴンズ ストーリー』で助監督だった菊地健雄と海野敦は『64』もやってますし、撮影の斉藤(幸一)さんも、録音の高田(伸也)君もそうです。菊地にしても録音の高田くんにしても映画美学校の僕の生徒だったんです。そういう人たちで『64』みたいな東宝の本編を作るというのは、それはそれで面白いなと思うわけですよ。そういう意味じゃ自主映画もメジャーも同じスタッフでやっているんですよね。『菊とギロチン』も似たようなスタッフでやっていますから、映画の大きさの違いはあまり関係ないですね。

——ところでDVDとBlu-rayには特典映像として「ヘヴンズ ストーリーの10年」という瀬々監督が構成・演出を担当した新撮映像が付くそうですが。

瀬々:長谷川朝晴さん、村上淳さん、忍成修吾さん、山崎ハコさん、菜葉菜さんにインタビューしているんですが、サト役の寉岡萌希さんとハルキ役の栗原堅一君には、映画に出てくる浦賀の渡船のところに行ってもらってカメラを回しています。

——寉岡さんはその後『リュウグウノツカイ』などの映画にも出演されていますが、瀬々監督の作品にはこの後、登場していませんね。

瀬々:やっぱりね、寉岡さんは『ヘヴンズ ストーリー』の中で少女から大人になったという、あの瞬間の奇跡みたいなイメージが僕の中であるんですよ。そういう意味では僕の他の作品に出てもらうと、あの聖なる瞬間を壊してしまうんじゃないかというような恐れがあって。僕の中で寉岡さんとはこれ1本という気がどこかするんです。長谷川朝晴さんにも、そういうところがあるんですよ。彼らがこの映画を背負ってくれた主役だから、そう思うんですが。ものすごい芝居をいっぱいやってもらったし、なかなか他の映画でちょっとした普通の役を演ってもらうという気に、なかなかならないんですよね。

——ソフト化が実現したことで、初めて目にする方も増えると思いますが。

瀬々:サトとハルキという少年少女の成長譚でもあるので、若い人たちがとっつきやすいと思うんですね。彼らが身近なところで死を経験して、その死の意味を知っていって成長する。それから、1章1章の短編を連続してつなげているような作品ですから見やすいと思います。今日は1章観よう、明日はもう1章観ようという見方があっても僕は全然構わないし、そういう意味では自由な見方ができる映画だと思うので、ぜひ食わず嫌いせずにこの世界を覗いて欲しいと思いますね。

(取材・文=モルモット吉田)

■リリース情報
『ヘヴンズ ストーリー』
発売中
収録時間:本編278分+特典映像
Blu-ray:5,800+税 Blu-ray2枚組(本編+映像特典収録)
DVD:4,800+税 DVD2 枚組(本編+映像特典収録)
監督:瀬々敬久 脚本:佐藤有記
出演:寉岡萌希、長谷川朝晴、忍成修吾、村上淳、山崎ハコ、菜葉菜、栗原堅一、江口のりこ、大島葉子、吹越満、片岡礼子、嶋田久作、菅田俊、光石研、津田寛治、根岸季衣、渡辺真起子、長澤奈央、本多叶奈、 佐藤浩市、柄本明、人形舞台 yumehina、百鬼どんどろ
発売元・販売元:ポニーキャニオン
(C)2010 ヘヴンズ プロジェクト

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