有村架純が最後に投げかけた”がんばっぺ”の意味 『ひよっこ』最終回が伝えたメッセージとは?

 先日、東京・浜松町にある世界貿易センタービルの建て替え工事が始まった。2020年開催の東京オリンピック後に解体され、新たに生まれ変わるという。1970年の建設から、およそ50年。それは、『ひよっこ』(NHK総合)で描かれる4年間、昭和の高度経済成長期と同時代でもある。

 東京オリンピック開催に向けて活気付く1964年、奥茨城村の坂道を「じいちゃん、おはよう!」と無垢な笑顔で勢い良く駆け下りるみね子(有村架純)の姿から物語は始まった。『ひよっこ』は、みね子を始めとした“普通の人々”が、様々な悲しみや時代の困難を乗り超え成長していく物語だ。最終週「グッバイ、ナミダクン」では、登場人物みなが報われる形で幕を閉じた。実(沢村一樹)がお土産にもらったカツサンドから始まったすずふり亭との縁、谷田部家みなでいつか店に食べに来るという夢がついに果たされる。記憶をなくしていた実が、預けていた重箱を思い出すという小さな奇跡と一緒に。

 第1週「お父ちゃんが帰ってくる!」から一貫して描かれてきたのは、「家族」といういつの時代も変わらぬ普遍的なテーマだ。みね子にとっての故郷は奥茨城の谷田部家。そして、みね子には東京にもう一つの大切な家族が出来た。向島電機を離れる時、いつも上を向きたくましく生きる愛子(和久井映見)をみね子は“東京のお姉ちゃん”と呼び、ほっておけない澄子(松本穂香)を“可愛い妹”、厳しくも温かな眼差しで見守っていてくれる鈴子(宮本信子)を“お母さん”のように思った。そして、みね子は“前田みね子”として秀俊(磯村勇斗)と共に幸せな家庭を築いていく。

 あかね坂には個性豊かな面々が暮らしていたが、裏天広場で繰り広げられる笑顔と涙の日々は本当の家族のようでもあった。それが色濃く映し出されたのは、一人で生きてきた世津子(菅野美穂)をみね子が孤独から救出し、商店街の人々に温かく迎えられた回だ。戦争を経験し、愛する人を亡くした2人、愛子と省吾(佐々木蔵之介)は“2番目”の人生を歩みだす。福田家の養女として迎え入れられる茜(上杉美風)を同じ境遇のヤスハル(古舘佑太郎)が「本当の親じゃなくても親子になれるんだぞ。幸せにな」と言葉を送るシーンからも、様々な家族の形が見て取れる。全ての人物に共通しているのは、起きた悲しみを受け入れ、自分自身と向き合うことが出来るという点だ。

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