高畑充希演じる加穂子は本当に“社会不適合者”なのか? 『過保護のカホコ』共感度低い主人公の魅力

 疑問の矛先は、さらに麦野という青年にも向かってゆく。現時点では、加穂子に大いなる“気づき”を与える重要人物として、挙句の果てには恋愛感情(?)までも抱かせてしまう好青年(言葉遣いは結構乱暴だけど)として描かれている麦野だけど、加穂子と知り合って間もないこの青年は、果たして何者なのだろうか? 友人はおろか、今のところ親や兄弟の気配も感じられない麦野(第一話で「親なんかいねえし」と言っていた?)。というか、学年で唯一進路登録も出さずに、「いずれピカソを超えるつもりなんで!」とうそぶきながら、指導教授からも評価されていない謎の抽象画を延々と描き続けているこの青年こそ、加穂子以上に「大丈夫なの?」である。

 無論、そこは何と言っても『家政婦のミタ』、『偽装の夫婦』(日本テレビ)など、クセのある脚本で知られる遊川和彦のこと。恐らくそのあたりが、今後の展開の肝となっていくのだろう。そう、このドラマは、加穂子の成長物語でありながら、その成長によって家族を含めた周囲の人々が変化していく、ある種の群像劇なのではないだろうか。『あまちゃん』の天野アキ、『表参道高校合唱部!』の香川真琴、はたまた『ちはやふる』の綾瀬千早のように、持ち前の行動力で周囲の人々を巻き込んでゆきながら、彼/彼女たちの心にドラスティックな変化をもたらせていく“台風”のような女の子。“共感度の低さ”はいつの間にか反転し、その一挙一動から目が離せない“吸引力”へと変化した。毎回絶妙なタイミングで挿入される、星野源による主題歌「Family Song」の心地好い温かみ――〈あなたはどこでも行ける/あなたは何にでもなれる〉に目元を潤ませながら、ドラマ『過保護のカホコ』の展開を大いに楽しみにしたい。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

■放送情報
『過保護のカホコ』
日本テレビ系にて毎週水曜夜10時~
出演:高畑充希、黒木瞳、竹内涼真、佐藤二朗、中島ひろ子、梅沢昌代、濱田マリ、夙川アトム、西尾まり、久保田紗友、三田佳子、西岡德馬、平泉成、時任三郎
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:大平太、田上リサ
演出:南雲聖一、日暮謙、伊藤彰記、明石広人
制作協力:5年D組
製作著作:日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/kahogo-kahoko/

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