ネットフリックス上陸から約2年、SVOD市場はどう変化した? 専門家が現状を分析

 Amazonプライム・ビデオやネットフリックスなど、新たなSVOD(サブスクリプション型ビデオ・オン・デマンド)が国内市場へと参入し、各社サービスの競争が本格化した2015年から約2年、業界の趨勢が次第に見えてきた。オリジナルコンテンツに力を注ぎ、テレビ各局と提携して充実したサービスを提供するSVODが増加する一方、大手レンタルビデオ企業のゲオは自社の配信サービス・ゲオチャンネルを6月30日に終了するなど、命運が分かれつつある。

 映画・映像のマーケティングを専門に手がけるGEM Partners株式会社は、今年2月に独自調査によるSVODの推計シェアを発表。現在、dTV、Hulu、U-NEXTの上位3社が48.3%のシェアを占めると読み、市場規模は2021年にかけて年平均7.7パーセントで成長し、2369億円規模になると予測している。(参考:[動画配信(VOD)市場に関する調査結果] 2016年の市場規模は前年の16.0%増  定額制動画配信市場では上位3社が48.3%のシェアを占める

 SVOD市場の現状をどう見るべきか。『ネットフリックスの時代』(講談社現代新書/2015年)の著者であるフリージャーナリストの西田宗千佳氏に話を聞いた。

「一部企業による寡占化が進んでいるのは事実だが、ユーザー数の多さだけではなく、その利用率も重要な指標。たとえばdTVの場合は、ドコモの携帯電話のオプションとして加入しているために、ユーザーがサービス自体を認識していないケースもある。また、アニメのユーザーと映画・ドラマのユーザーでは動向が異なり、たとえばdTVとdアニメストアでは、加入者はdTVの方が圧倒的に多いが、アクティブユーザーの比率でいえばdアニメストアは非常に高い。コンテンツ提供者からしてみれば、ユーザーに視聴されてはじめてSVODの恩恵を受けられるため、高いシェア率を誇るサービスはその利用率がどれくらいなのか、今後はより問われるだろう」

 一方で、ネットフリックスなどはオリジナル作品が充実し、各方面から高い評価を得ているものの、シェア率は決して高くない。今後はライトユーザーにどのように訴求していくかが、国内における同サービスの課題のひとつといえるだろう。

 各サービスの課題が明確になりつつある中、ゲオチャンネルが早期撤退を決断した背景を、西田氏は次のように見ている。

「先述のdTVとdアニメストアの違いでいうと、前者は百貨店、後者は専門店にあたり、ビジネスとして並存し得るもの。また、複数のサービスに加入しているユーザーも多いため、市場全体として利用者の集約が進んでいるのは確かだが、他のサービスが完全に淘汰されるわけではない。しかし、ゲオチャンネルは大きなビジネスを想定していたにも関わらず、思いのほか利用者数が増えなかったため、継続的なビジネスモデルを構築できなかった。専門性の高いサービスを適切な規模感で構築できれば、チャンスはあったかもしれない。レンタルビデオやディスクビジネスの市場は急速に落ちてきているため、その代替としてSVODの価値が高まるのは必至。ゲオやTSUTAYAがSVODの有力なプレイヤーとなれなかった以上、業界の力関係には変化が生まれるはず」

 次の一手を巡る攻防は、すでに始まっている。Huluはリアルタイム配信を強化するため、5月17日からシステムをリニューアル。これまでPCのみだったリアルタイム配信が、モバイルでも視聴可能になるほか、海外ドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、ニュースに加え、6月1日から新チャンネル「MTV MIX」のリアルタイム配信も開始する。AmazonプライムビデオやNetflixは、国内の各テレビ局や制作会社との繋がりを強め、さらに国内向けコンテンツを拡充していく見込みだ。国内の制作会社にとっては、SVODは急速に新たな収益源となりつつある。

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