追悼・鈴木清順 不世出の天才監督が映画界に残したもの 

 ところが観てもさっぱりわからない? そうなれば、映画は完全に理解する必要のないものだと割り切る以外仕方がない(もちろんわかりやすい映画の方が多いのだけれど)。他人の、よりによって“映画の天才”清順の頭の中に描かれたものなのだから、難しくて当然なのだ。でもそれは同時に、自分の頭の中に描かれたものを他者に面白く、映画として提示することの難しさを教えてくれる。だからこそ魅力的で、もうこのような映画監督は世界中のどこを探しても、二度と現れることはないのだろう。

 奇しくも先日、アメリカのアカデミー賞で歴代最多タイのノミネートを獲得した『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督は、同作の構想段階で『東京流れ者』からインスピレーションを受けたことを明かした。おそらく清順は『ラ・ラ・ランド』を観ることはできなかっただろう。それでも、27日に行われるアカデミー賞の授賞式で、下馬評通り行けばチャゼルは監督賞か脚本賞で壇上に上がるはずだ。そのスピーチで、清順へ向けた一言が登場すれば、この不世出の天才を、世界は再認識することだろう。

 清順監督、「映画」をありがとうございました。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

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