ティム・バートンの作風に変化アリ? 『ミス・ペレグリン』に自ら登場した背景
なぜ、彼は顔を出さずにいられなかったか?
このように周囲の要素、作り手、演じ手の才能が存分に発揮されてチームとして際立っているからこそ、懐の深い作品に仕上がった。バートン自身も時に遊び心たっぷりにストップモーション・アニメや『アルゴ探検隊の大冒険』を彷彿させるシーンなどを忍び込ませるのだが、それすら本作は個性の一部として受け止め、違和感なく溶け込ませていく。とりわけ『アルゴ探検隊』が炸裂する付近は、こどもたち全員が各々の特殊能力を活かして敵をやっつけようとする最高潮の箇所なのだが、そこでふと気づくと、あれれ!?
あろうことかティム・バートン自身の顔面アップ! ブラックプールの桟橋にかかる遊園地にて、こどものようにアトラクションで戯れる姿が一瞬映し出されるのだった。
なぜ彼は、ここで一瞬、顔を出してしまったのか。そうせずにいられなかったのか。幼い頃のように自分だけの世界に閉じこもるのではなく、はたまたディレクターズ・チェアに居座り続けるでもなく、“人とは違う”子供たちが伸び伸びと個性を爆発させるこの祝祭的、饗宴的な場面に身も心も誘われるかのように、自身もそこに身を投じずにいられなくなったのではないか。
人と違うのは尊いこと。だが、もしも人とは違う才能が集まり、思い切り力を発揮し合い大きなことを成し遂げられたなら、それはもっともっと尊いことーー。夢を追い駆け続ける永遠の少年から次世代の子供達への、自ら身を乗り出してしまうほどのメッセージが、作品全体から聞こえてくるような気がした。
■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。Twitter
■公開情報
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
全国公開中
監督:ティム・バートン
出演:エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、サミュエル・L・ジャクソン、エラ・パーネル、ジュディ・デンチ、テレンス・スタンプ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2016 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/staypeculiar/