アメリカで高評価の『Looking/ルッキング』、TVドラマ界に一石を投じた“愛と友情のかたち”

 LGBTへの理解が世界的に広がりを見せる中、アメリカで高い評価を獲得した画期的なテレビシリーズがついに日本に到着。12月23日よりHuluにて独占配信がスタートする。その名は『Looking/ルッキング』。

 ベースとなるのはプロデューサーでもあるマイケル・ラノンが2011年に発表した『Lorimer』という短編映画だ。これをテレビシリーズへと発展させる形でHBOがゴーサインを出し、シーズン1の第1~3話では、『ウィークエンド』や『さざなみ』で知られる英国出身のアンドリュー・ヘイが監督・脚本を務めている。いま現在、Rotten Tomatoesで実に89パーセントもの批評家がポジティブな意見を寄せる本作は一体どのような内容なのか? そしてこれほど支持を集める理由は何なのか?

3者がそれぞれの目線で“Looking”するもの

 

ストーリーはサンフランシスコで暮らす3人のゲイの親友たちを中心に描かれていく。世代はバラバラ、それぞれに見つめる愛や友情、仕事や将来に対する考え方も全く違う。例えば……。

 

 いちばん若いパトリック(ジョナサン・グロフ)は29歳。ゲーム・デザイナーとして安定した会社勤めをしながらも、私生活ではかつての恋人が結婚する報を受け、内心かなり動揺している。孤独から脱出しようと恋人、兼同居人を探し始めるも、ナイーブな性格とタイミングの悪さが手伝ってなかなか順調にはいかない。

 

 髭モジャがトレードマークのアグスティン(フランキー・J・アルバレス)は若干ラテンの血が混じった31歳。最近になって恋人と同居を始めたばかりだ。芸術家として独り立ちする野心を持ちながらもアシスタントの位置に甘んじていて、30代に差し掛かったいま、複雑な岐路に立たされることに。

 

 そして一番の年長者のチョビ髭のドム(マレー・バートレット)は39歳。親友の女性ドリスとルームシェアして暮らしている。将来的に自分の店をオープンさせたいと考えているが、元カレとのトラブルが原因で夢を果たせず、レストランのウェイターの位置にとどまっている。

 同じエリアに住むもの同士。3人はしょっちゅう集まって、特に肉体関係を持つわけでもなく、自分の胸の内をさらけ出す。そしてまたそれぞれの暮らしへと戻っていく。

 このドラマ製作が起動した時、一部では「ゲイを主人公とした『Sex and the City』、
あるいは『Girls』的な作風になるのでは?」との憶測が飛んだという。だが、完成した本編を観て誰もが「ああ、なるほど!」と胸にストンと落ちてくるものを感じたようだ。というのも、ここでは何ら煌びやかなことや、コメディ色が強調されること、それに特別な事件が巻き起こることもなく、登場人物たちの“日常”が驚くほど丁寧に紡がれていたからだ。

 

 ちょっとおかしな例かもしれないが、外国映画で日本や日本文化が描かれる時、我々は「あれ?」と苦笑、あるいはあまりに違っていて憤りすら感じることがある。きっとLGBTの人々は映画やテレビでセクシャル・マイノリティのキャラクターが登場するたびに同様の違和感や怒りを抱くことが多いに違いない。それが本作ではどうだろう。交わされるセリフ、用いられる言葉、生活のディテール、バーでの視線の絡み合い、ちょっとした表情、仕事とプライベートのウェイトの置き方、友情のあり方など、細やかなところの描写が非常にナチュラル。作り手たちがドラマ界に新たな地平を切り開こうと心を尽くした情熱がひしひしと伺える。きっとこのようなドラマがこの先、当たり前のように増えていくことで、世界を取り巻くスタンダードは大きく変わっていくのだろう。

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