ジェンダーフリー体現する柴咲コウ、次期大河ドラマ『おんな城主 直虎』は代表作に?
NHK大河ドラマ『真田丸』も12月18日でついに最終回。2017年1月8日からは新しい大河『おんな城主 直虎』がスタートする。主人公がマイナーな一大名・井伊直虎ということもあって、歴史クラスタを興奮させた『真田丸』に比べると、話題性、期待値ともに今ひとつ。ネット上の反応なども盛り上がっていないように見えるが、実は「題材×主演のマッチング」という公式で考えると、堺雅人主演の『真田丸』に負けないほどぴったりフィット。他の誰でもない、柴咲コウ主演であるからこそドラマとしての化学反応が期待できる。
柴咲が演じる井伊直虎は、戦国時代に実在した女大名で、織田信長が台頭してくる前、東海地方の武将であった井伊家本家のひとり娘として生まれた。他に男子はなく、そして、婚約者の男性が行方不明になってしまうなど、数奇な運命と激しい時代の流れによって、井伊家当主の座に就くことになる。ドラマでは、直虎が幼少期に家督を継ぐと思い込んでしまい、そこから「お嫁に行く」という当時の女性とは違う価値観と使命感を抱くようになって、井伊家存続のために人生をかけていく。脚本・森下佳子(『ごちそうさん』など)の作家性と構成力がいかんなく発揮されそうなオリジナル色の強いストーリーだ。
柴咲コウには、直虎のようにジェンダーを超える役が似合う。10年前の主演映画『どろろ』では男のフリをしている泥棒を演じ、『大奥』(2010年、原作:よしながふみ/松竹)では、女将軍・吉宗役。流行病で男子が激減したため男女の立場が逆転した江戸時代という奇抜な設定に、他のキャストがなんとかついていっている感じが見える中、柴咲だけが超然としたリアリティを持って女将軍をナチュラルに演じていた。生まれたときから女性が大名、将軍になる世界で育ち、権力者としての自信と自負をもった頭脳明晰な政治家。それを体現できるのは、この年代の女優では柴咲だけだろうと思わせるほどの絶妙な演技だった。『大奥』公開時のインタビューで、監督の金子文紀(『逃げるは恥だが役に立つ』などの演出家)はこう語っている。
「彼女は、最初から吉宗として存在しているようで、『吉宗だ』って何の理屈もなく周囲に思わせることができていたのですごいなと思いました。とにかく、かっこよかったですね」
もちろん、ハリウッドデビューを果たした『47RONIN』や『○○妻』などで演じたように、男性に寄り添う王道のヒロインを演じることも多く、近作の『信長協奏曲』では織田信長の妻、帰蝶役。しかし、この役も原作コミックでは弱々しくオロオロしている女性なのに、ドラマ・映画では夫にタメ口を聞く妻という時代設定で考えればありえないキャラクターに変わっていた。また、『ガリレオ』シリーズや11月に放送された『氷の轍』のように男性刑事の部下というポジションでも、女性ゆえに得をしたり損をしたりすることがない。パンツスーツに身を包んでいても無理をしている感じがせず、男女の前にフラットにひとりの人間として存在する。ドラマや映画の作り手たちは、彼女にそんな役を託したくなるようだ。