堺雅人が“組織で働く人々”の共感を呼ぶワケ 『真田丸』最終回で『半沢直樹』ブーム再来か?

 『真田丸』の公式サイトで、堺は「幸村は基本的に公務員のイメージで演じている」と語っている。真田丸を堤防に例え、「ここを突破されたら本当に困る」という気持ちで守ることが、現代の公務員にも通じるそうだ。もともと学生時代は官僚を目指していたという堺。幸村役は、04年に三谷幸喜と初めて組んだ大河ドラマ『新選組!』(04年/NHK)の副長・山南敬助や、『官僚たちの夏』(09年/TBS系)で演じた通産官僚・庭野、そして半沢とつながっていて、堺に最もハマるキャラクターだと言えるだろう。

 堺の演じる役柄としては、『リーガル・ハイ』(12年/フジテレビ系)の奇人弁護士・古美門のように、キレやすくて自己中心的な男というもうひとつのキャラクターがある。『真田丸』も前半、幸村の青春時代を演じていたときは、シリアスな場面では半沢、コミカルな場面では古美門のように見え、新鮮味に欠けていた。そのどちらでもないグレーゾーンの演技が見たいと少し物足りなかった。しかし、若い頃は策に溺れたり軽率な行動を取ったりしがちだった幸村も、終盤、40代半ばになり、冷静沈着かつ人心をつかめる人間的魅力をもった武将に成長。後藤らに「おぬしはなんのために戦うのだ」と尋ねられて、「それが、私にも分からないのだ」と答えた幸村の複雑な表情には、これまでにない魅力があり、このドラマが「倍返し」のように単純なリベンジでは終わらないことを示している。堺自身が当時の幸村と同年代の43歳という偶然も面白い。最終回で幸村が見せるのは、無念の顔か“答え”を見つけた充足感か。そこではきっと堺雅人の新境地が見られるはずだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『真田丸』
NHK総合にて毎週日曜20時〜放送中
作:三谷幸喜
制作:屋敷陽太郎
演出:木村隆文
出演:堺雅人、内野聖陽、大泉洋、長澤まさみ、黒木華、木村佳乃、草刈正雄、高畑淳子ほか
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/

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