モルモット吉田の『At the terrace テラスにて』評:多くの観客に観てほしい極上の喜劇

モルモット吉田の『テラスにて』評

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 先ごろの東京国際映画祭では外国人プレスにも大受けの抱腹絶倒上映となったが、筆者はこの極上の雅やかな喜劇を誰にも教えずひとりで繰り返し観たいと思った。新宿武蔵野館で1週間限定のレイトショーというのも、そうした密かな楽しみにふさわしい上映形態ではないか。だが、前作『友だちのパパが好き』が公開から1年が経とうというのに、いまだ配信もソフト化の気配すらないことからも分かるが、山内ケンジの映画はヒットしない。おそらく本作も1週間上映されたきり、そのまま観る機会を失う公算が大きい。そのような理不尽をまかり通らせないために、ひとりでも多くの観客に新宿武蔵野館へ駆けつけていただきたい。殊に控え目に会話していた人々がある瞬間から踊り出すという、現代の日本映画では、ほぼ不可能なシチュエーションがまんまと成り立ってしまうシーンは必見である。

 なお、3つのグロテスクを意味する舞台題の『トロワグロ』だが、答えを1つだけ前掲書で山内は明かしている。戦闘機の製造をめぐって男たちが嬉々として盛り上がる中、宗之がはる子にスケベな視線を向けるシーンだという。残りの2つが何かは観客の置かれた立場によって、かなり意見が別れるのではないだろうか。答えと言えば、最初に映るムササビに何の意味があったのかも最後に明かされるが、あらゆる予想を超えたものであるとだけ予告しておく。

※文中の台詞は『トロワグロ』(山内ケンジ 著/白水社)より引用。

『At the terrace テラスにて』予告編

■モルモット吉田
1978年生まれ。映画評論家。「シナリオ」「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿。

■公開情報
『At the terrace テラスにて』
新宿武蔵野館にてレイトショー上映中
脚本・監督:山内ケンジ
出演:石橋けい、平岩紙、古屋隆太、岩谷健司、師岡広明、岡部たかし、橋本淳
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
(c)2016GEEKPICTURES
公式サイト:http://attheterrace.com/



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