松田龍平 × 山下敦弘『ぼくのおじさん』対談 山下「自分で言うのも何ですが、このタッグは面白い」

松田龍平 × 山下敦弘『ぼくのおじさん』対談 山下「自分で言うのも何ですが、このタッグは面白い」

ラストシーンで訪れた映画の“マジック”

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−−この映画を語る上で欠かすことができないのが、雪男を演じた大西利空君の存在感です。おじさんと雪男の関係性がこの映画の肝とも言えますが、日本パートからハワイパートへと移行していく中で、松田さんと利空君の関係性がより深まっているように見えました。

松田:日本での撮影が終わってからハワイでの撮影まで、少しだけ時間が空いたんです。その期間、利空と離れていたら、自分が「おじさん」をまた演じられるか急に不安になってしまって。考えてみると、雪男が「おじさん」にとっての鏡になっていたんですね。利空が演じる雪男の顔を見ることで、自然に「おじさん」になっていったんだなと再確認したんです。だから、ずっと一緒にいるハワイパートの方が、親密度は自然と高くなったかもしれないです。

山下:日本で撮影している時は、二人の関係性はそうでもなかったんです。日本パートでは、利空は妹がいるお兄ちゃん役でもあった。もちろん、龍平君とのシーンが多いんだけど、家族がいて、学校もあって、雪男にとっての世界は「おじさん」だけじゃなかった。それがハワイに行ってからは、ある意味二人だけの世界になる。だからか、利空もハワイに来てから急に頼もしくなって。雪男がこの映画の語り部であり、雪男あっての「おじさん」なんだ、というのがハワイパートでよく分かりましたね。利空は誰よりもシナリオを読み込んでいて、本当に頼もしかったです。日本パートでは、どこか「おじさん」の観察者で受け身の演技だった利空が、ハワイパートでは龍平君をどんどん引っ張っていく存在感を見せてくれました。

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−−「おじさん」と雪男、二人が最後に夕陽を見て、そのままエンドロールに入りますが、このシーンの二人の表情、幻想的な雰囲気がとても素晴らしかったです。

山下:ロケハンした時からあの農園から見える景色がすごくいいなと思っていたんです。決して有名なスポットではないんですけど、どこかで使おうと考えていました。結果、ラストを飾るシーンとなったのですが、当日は天気が不安定で撮影が大変でした。

松田:ラストシーンを撮影している時、フィナーレ感がすごかったのを覚えてますね。

山下:現場でそんなこと感じてたの?

松田:感じていました。幻想的な夕陽を見ながら、利空が海にクジラが見えたみたいなことを言い出しまして。二人で「クジラどこ?」って探している中で、あの夕陽に包まれていたら不思議な気持ちになっていました。

山下:あのシーンを撮るギリギリまで土砂降りだったんだよね。諦めて帰ろうかなと思ったタイミングで、パッと晴れて「今だ」と。

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−−「おじさん」が、これまでとは少し違う“大人”になった雰囲気をまとっているようで、印象深かったです。シリーズ物としてずっと見ていたい気持ちになりました。

山下:俺もやりたいと思っていますけど、龍平君がどう思っているか次第かな(笑)。

松田:是非やりたいですね。早くしないと利空がどんどん大きくなっちゃいますし。続編を作るとしたら原作がない分、また自由なこともできますよね。

山下:みんなで話していた中で候補として出てきたのはドイツだったよね。おじさんは一応哲学者なので、カントやニーチェの故郷であるドイツを目指すんじゃないかって。

−−「寅さん」シリーズのように老若男女が楽しめる作品になっていきそうですね。

山下:小学生の頃、1年に1回くらい体育館とかで映画鑑賞会があったじゃないですか。ああいう場で上映してもらえる作品になれたらいいですね。俺が小3とか小4だったら「えー、『ぼくのおじさん』?」とか言いながらブーブー言いながら見に行くんですけど、見終わった後に一番興奮しているタイプなんです(笑)。「意外と良かったな」みたいな。そういう映画になって欲しい。

−−実際に、この映画の「おじさん」がいたらどうでしょうか。

松田:割と可愛げのある「おじさん」ではありますよね。でも、映画の「おじさん」は、あくまで雪男の目線で見たイメージの「おじさん」なので。実際にいたらそんなに可愛げがある人じゃないですよね。かなり面倒くさい人だと思います(笑)。

山下:「おじさん」には雪男が必要なんだよね。

松田:雪男が見るからこそ可愛げが出るんですよね。

山下:でも、映画界には「おじさん」に似ているような人、社会不適合者は結構いるんですよ(笑)。「おじさん」は哲学という、ある種答えのないものを研究する人間じゃないですか、映画を作る行為も哲学と似ている部分があると思うんです。そういった部分で言うと、大体の映画監督はおじさんと似ている部分があるんじゃないかなあ。

(取材・文=石井達也 撮影=三宅英正)

■松田龍平 ヘアメイク 須賀元子 スタイリスト 坂元真澄(The VOICE)

■公開情報
『ぼくのおじさん』
11月3日(木・祝)全国ロードショー
監督:山下敦弘
出演:松田龍平  大西利空(子役) 真木よう子 戸次重幸 寺島しのぶ 宮藤官九郎 キムラ緑子 銀粉蝶 戸田恵梨香
原作:北杜夫「ぼくのおじさん」(新潮文庫刊)
(c)1972北杜夫/新潮社 (c)2016「ぼくのおじさん」製作委員会
公式サイト:www.bokuno-ojisan.jp

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