石原さとみ、北川景子、上野樹里……“ハチロク世代女優”がいま注目を集めるワケ

漫画実写化やデフォルメされた役との相性も良い

 彼女たちがデビューした2000年代以降は、幅広いジャンルの漫画実写化作品が作られるようになり、リアリティよりもエンタメ重視の作品が増えた。そのため、フィクション性の高いキャラと相性の良い役者の需要も高まっている。さらに、インターネットやスマートフォンの普及でエンターテイメント分野の多様化が進み、地上波放送のドラマでも、より刺激的なキャラクターが視聴者から求めるようになった。

 上野樹里は、出世作である『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)で、恋人から「変態」と罵られる野田恵役を演じ脚光を浴びる。そのハマり具合と強烈なキャラクターは、良くも悪くも“上野樹里=のだめ”という意識を視聴者に植え付けるほどのインパクトを与えた。一時期はそのイメージに苦しめられたようだが、ドラマ『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)や『アリスの棘』(TBS系)への出演で新境地を開拓し、近年は韓国映画『ビューティーインサイド』や『家族ノカタチ』(TBS系)などの作品で、再び注目を集める存在となった。

 『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)で、リアルとはかけ離れた荒唐無稽な主人公を演じている石原さとみも、過去に『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)で“あざと可愛い”小悪魔女子の高橋紗絵子役、『進撃の巨人』で“怖いもの知らずの変人”と称されるハンジ役を演じるなど、ひと癖あるキャラでどの作品にも爪痕を残している。特に、『シン・ゴジラ』で演じたカヨコ・アン・パタースン役は、同作を語る上で触れずにいられない独特のキャラクターだった。決して流暢とはいえない英語で帰国子女っぽく振舞うさまは、冗談なのか本気なのかわからない、しかし微笑ましいキャラクターだった。

 また、『校閲ガール・河野悦子』、『ドクターX』(テレビ朝日系)、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、『Chef~三ツ星の給食~』(フジテレビ系)など、今季ドラマクールを見ても分かるように、最近は女性が主人公の作品が増加傾向にある。美しさと強さ、さらにユーモアを兼ね備えた86年代女優が、時代が求める理想の女性像と一致していることも、彼女たちの飛躍に繋がっているのではないだろうか。

 もちろん、彼女たちがこれまで演じてきた役柄のすべてが“一癖ある役”であったわけではない。10代〜20代にかけて、地道にキャリアを積み重ねたからこそ、現在の人気があるのは間違いない。今年で30歳を迎え、女優としてますます充実期にいる彼女たちが、今後どのような活躍を見せていくのか楽しみだ。

(文=泉夏音)

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