ダースレイダーの『高慢と偏見とゾンビ』評:恋愛小説 × ゾンビのマッシュアップやいかに?

ダースレイダーの『高慢と偏見とゾンビ』評

 小説版『高慢と偏見とゾンビ』はコメディーと割り切っているのですが、実写となるとまた勝手が違います。バー・ステアーズ監督は「『高慢と偏見』とゾンビジャンルの両方に真面目で率直な敬意を表すトーンが必要」と語りますが、エネルギーの衝突を生むべきマッシュアップ作品へのアプローチとしてはかなり大人しい態度です。長編小説の実写化だけでも尺などの課題が多いのですが、そこにゾンビも入れて、両方に敬意を表した結果、原作を語る部分は、手紙の万能感がやたらと強調されてしまうなど、かなり駆け足になり、ゾンビは結局監督自身が「トッピングのようなもの」(でも、そのトッピング、腐ってますよ!)と語る程度の存在感に収まっています。

 ゾンビの解釈はちら見せにとどまり、あまり恐怖感を描かなかったために、ゾンビに襲われるという状況への絶望感が希薄です。とはいえ、主人公姉妹が武装してパーティーに行くシーンや、主人公姉妹が隊列を組んでゾンビを切り捨てるシーン、死肉を好むハエなど楽しい場面もあります。グロ描写も少ないのでカップルの休日ランチの前や原作『高慢と偏見』およびゾンビの入門編として観賞するのが良いと思います。

■DARTHREIDER a.k.a. Reu Wordup
77年フランス、パリ生まれ。ロンドン育ち東大中退。Black Swan代表。マイカデリックでの活動を経て、日本のインディーズHIPHOP LABELブームの先駆けとなるDa.Me.Recordsを設立。自身の作品をはじめメテオ、KEN THE390,COMA-CHI,環ROY,TARO SOULなどの若き才能を輩出。ラッパーとしてだけでなく、HIPHOP MCとして多方面で活躍。DMCJAPAN,BAZOOKA!!!高校生RAP選手権、SUMMERBOMBなどのBIGEVENTに携わる。豊富なHIPHOP知識を元に監修したシンコー・ミュージックのHIPHOPDISCガイドはシリーズ中ベストの売り上げを記録している。
2009年クラブでMC中に脳梗塞で倒れるも奇跡の復活を遂げる。その際、合併症で左目を失明(一時期は右目も失明、のちに手術で回復)し、新たに眼帯の死に損ないMCとしての新しいキャラを手中にする。2014年から漢 a.k.a. GAMI率いる鎖GROUPに所属。レーベル運営、KING OF KINGSプロデュースを手掛ける。ヴォーカル、ドラム、ベースのバンド、THE BASSONSで新しいFUNK ROCKを提示し注目を集めている。

『高慢と偏見とゾンビ』予告映像

■公開情報
『高慢と偏見とゾンビ』
9月よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国順次ロードショー
監督・脚本:バー・スティアーズ
原作:「高慢と偏見とゾンビ」ジェイン・オースティン&セス・グレアム=スミス著(二見文庫 安原和見:訳)
出演:リリー・ジェームズ、サム・ライリー、ジャック・ヒューストン、ベラ・ヒースコート、ダグラス・ブース、マット・スミス
配給:ギャガ
(c)2016 PPZ Holdings,LLC
公式サイト:http://gaga.ne.jp/zombies

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる