『ゲーム・オブ・スローンズ』に並ぶ大作ドラマ誕生!? J・J・エイブラムス『ウエストワールド』への期待

『ウエストワールド』は『GOT』を越える?

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 映画ファンならタイトルを見ただけでピンと来るだろうが、本作は1973年に人気作家・マイケル・クライトン(『ジュラシック・パーク』『ER緊急救命室』)が初監督をつとめ、脚本家としても名を上げた同名映画を原案としている。映画は今観るとゆるい展開ではあるが、砂漠に建設された、西部開拓時代、中世ヨーロッパ、帝政ローマの3つのワールドを体験できる巨大テーマパークを純粋に楽しむ、割とのんきな始まりから、ユル・ブリンナー扮するロボットが中心となって、客である人間、そして管理者たちへと歯向かっていく展開は、今見てもなかなか面白い。ドラマでは、ブリンナーを彷彿させるのがエド・ハリス扮する謎の男(残忍なキャラクターだが、ものすごくかっこいい!)なのだが、果たしてどうなのか。

 シーズン1は全10話。過激なバイオレンスを挟み、謎も多いが淡々と進む第1話は、良質の映画のごとく、状況の説明などが少ない作りは視聴者に親切とは言えないかもしれないが、それこそがHBOのブランドでもある。何かすごいものが始まりそうだぞと予感させておいて、シーズンを通してじっくりと盛り上げていくパターンは『ゲーム・オブ・スローンズ』などにも同じ。また、映画は未見でも何ら問題はない。映画のノリや、あくまでも高度に発達したテクノロジーに対する人類への警鐘と読み取れるテーマは、時代性もあるだろう。人間の視点から物語を描いている点でも、ドラマとは根っこは同じだが別物という印象だ。ただし、映画を観ていればあれこれ深読みする楽しみもあるので、機会があれば見比べてみることをお勧めする。

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 AIの反乱は、決して目新しいテーマではない。だが、本作のクリエイターがジョナサン・ノーランと、その妻リサ・ジョイ・ノーランであることに加えて、常にテレビに革命を起こしてきたHBOとくれば、そのブランド力に期待せずにはいられない。SFであり西部劇、アクションの要素も強いが、哲学的で知的なミステリーといったテイストはノーラン節と言える。プロデューサーとしてのJJは、ドラマ『エイリアス』や映画『スター・トレック』などでもおなじみのように、登場人物のチームワークが自身の作品の大きな魅力であるがごとく、仕事相手(チーム作り)にも長けている。映画からテレビへとノーランを引っ張り、ドラマ『パーソン・オブ・インタレスト』を成功させた実績もある。ドラマは1シーズン終わってみなければ真価を問うことは難しいが、とんでもない傑作(あるいはカルト)の誕生となる可能性を秘めた本作を見逃す手はないだろう。1話1話を、見応えのある映画に臨むかのようにじっくりと堪能したい。

■今祥枝
映画・海外ドラマライター。「BAILA」「日経エンタテインメント!」「エクラ」「MY STAR CLUB」「シネマトゥデイ」など雑誌・ウェブで連載。ほかプレス作成、劇場用パンフレットにも寄稿。時々ラジオ、映像のお仕事。著書に「海外ドラマ10年史」(日経BP社)。Twitter

■放送情報
『ウエストワールド』
10月13日(木)より、毎週⽊曜23:00ほか、スターチャンネルにて独占日本初放送(全10話)
※10月13日(木)&29日(土)は第1話無料放送
原案:マイケル・クライトン
製作総指揮:J・J・エイブラムス、ジョナサン・ノーラン、リサ・ジョイ、ジェリー・ワイントローブ
監督・脚本:ジョナサン・ノーラン、リサ・ジョイ(脚本)
出演:アンソニー・ホプキンス、エド・ハリス、エヴァン・レイチェル・ウッド、ジェームズ・マースデン、タンディ・ニュートン、ジェフリー・ライト、ジミ・シンプソン
公式サイト(スターチャンネル):http://www.star-ch.jp/westworld/
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