『パール・ハーバー』へのリベンジ? マイケル・ベイ監督『13時間 ベンガジの秘密の兵士』は痛快!
――と、ここまで『パール』を失敗作として散々引き合いに出してきたわけですが、長年のベイ監督ファンとして、『13時間』で一番胸が熱くなったシーンは、他ならぬ『パール・ハーバー』ありきのシーンです。
『パール』最大の見所である真珠湾爆撃には、落下する爆弾視点のシーンがあります。それと全く同じシーンが『13時間』のクライマックスに来るのです。このとき、私は思いました。ベイ監督の二十年来のファンである私ですら、『パール・ハーバー』は確かに世評通りの失敗作だと思います。しかし、それは確実にマイケル・ベイという監督の中の血肉となった。現にベイ監督は、いやベイは、ここまでやってきたのだし、この『13時間』を撮ることができたのです。そして自身の最大の失敗作へのリベンジのクライマックスに、その失敗作と同じシーンを最高の形で決める。失敗も成功も、すべてを血肉として果たした完璧なリベンジです。
マイケル・ベイは決して傑作を連打するタイプの監督ではありません。『パール』のように失敗だったと思う映画もあります。しかし、彼もまた一人の失敗と成功を重ねながら、誰にも真似できない個性を作り上げていった映画作家なのです。『13時間』は現時点での映画作家マイケル・ベイの総決算であり、過去に作った大きな借りを返す痛烈な一打であり、新たな一歩を示す力作と言えます。本作は残念ながら日本では劇場公開されませんでしたが、マイケル・ベイのファンの方はもちろん、戦争映画ファンの方、そして心の底から小指と親指を立てたい方も、必見だと言えるでしょう。
■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。
■作品情報
『13時間 ベンガジの秘密の兵士 ブルーレイ+DVD+ボーナスブルーレイ(3枚組セット)』
発売中
監督:マイケル・ベイ
出演:ジョン・クラシンスキー、ジェームズ・バッジ・デール、デヴィッド・デンマン、マックス・マーティーニ、パブロ・シュレイバー
販売元:パラマウント
時間:144 分
製作:2016 アメリカ