滝沢秀明、“困り顔”の色気ーー『せいせいするほど〜』の情けない演技が人々を惹きつけるワケ
AKB48の島崎遥香は、そのアンニュイかつコケティッシュな表情から“困り顔女子”とも称され、男女問わぬ人気を博している。巷では“困り顔メイク”なるものも流行しているらしく、多くの女性にとってもその表情は、時代の気分を象徴した魅力あるものとして映っているようだ。では、“困り顔男子”はどうか。現在放送中のドラマ『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)に出演中の滝沢秀明を見ていると、男性の困り顔にもまた独特の色気があり、人々を惹き付けているように感じる。
9月6日に放送された第8話では、滝沢演じるティファニー社の副社長・三好海里の困り顔が何度も繰り返し披露された。かつて離婚を決めたはずの妻・優香(木南晴夏)は、事故による記憶喪失と生来の激しい性格から、常軌を逸した行動で海里につきまとう。部下であり、不倫関係にあるヒロインの栗原未亜(武井咲)は、優香の行動に責任の重さを感じ、海里との別れを決意する。だが、それでも未亜と話したいという海里は、会うのさえ躊躇う未亜のもとを訪れ、ドア越しに懇願する。「頭ではわかってる、わかってる! もしも本当に別れるしか道がないなら、受け入れる。だけど最後にちゃんと話したいんだ。なぁ、栗原!」ドアを叩きながら必死に語りかける海里の声と表情は、本ドラマの中でも一二を争うほど切迫した雰囲気が漂っていて、つい感情移入してしまった方も多いのではないだろうか。道ならぬ恋と知りながら、それでもしがみつこうと必死になる姿は、涙を誘うものがあった。
その後、海里は未亜をなんとか説得し、ふたりが出会った場所である迎賓館赤坂離宮を訪れる。海里は未亜に正直な思いを告げ、未亜もまた、ふたりで過ごした幸せな日々への感謝を告げる。しかし、それでも未亜の心は固く、はっきりと別れを宣言するのだった。ひとり残された海里は、空を眺めながら静かに涙を流す。その困り顔にもまた、哀切と色気が濃厚に漂っていた。
滝沢にとって本作は久しぶりの主演ドラマである。以前の可愛らしいイメージから一転、どこか渋さも感じられる大人っぽい表情へと変わっていたのは、多くの視聴者も指摘しているところだ。そのイメージの転換は、眉間にしわを寄せる表情にリアリティを与えるとともに、これまでにないセクシーな色香も感じさせる。もしかしたら滝沢は、年齢を重ねるごとに色気を増していくタイプの俳優なのかもしれない。ロマンスグレーになっても人々に“セクシー”と言わしめるなにかが、滝沢の表情にはある。
また、困り顔とともに注目したいのが、そのプロポーションだ。未亜と別れるシーンで海里は、いつもの青いスーツのジャケットを脱ぎ、ジレとパンツという姿なのだが、とくに下半身が鍛えられていることが、引き締まった尻の形から伺える。大人っぽい表情を手に入れながらも、その肉体はいまなお現役のアイドルであることのギャップーーここにもまた、滝沢の困り顔の魔力が潜んでいるように感じるのは、筆者だけではないだろう。どこから見ても完璧な滝沢だからこそ、見ようによって情けなくも映るその困り顔も、魅力として引き立つのである。