「日本映画をハリウッド風に作ってはいけない」 美術監督・種田陽平が語る、表現のオリジナリティ

種田陽平インタビュー

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ーー最近は、背景がすべてフルCGであったり、本作のようにアニメーションと実写を組み合わせた作品も増えており、着々と映像技術が進歩していると思います。美術監督に求められるものにも変化があるのでしょうか?

種田:たしかに技術面の進歩はありますが、アイデアを考えるのは人間です。それに、CGやアニメーションといったデジタル技術は、誰がデザインしても結果的に似たようなデザインになってしまうリスクがある。そうならないためにも、映画の基盤となる世界観のコンセプト、アイデアや方向性は独創的でオリジナルなものを目指す必要があり、そこに僕の仕事があると感じます。それにしても、映画づくりでなにより難しいと感じるのは、CG、アニメ、実写の高いクオリティを保つということです。どんなジャンルの映画、どんな分野の仕事においても、高いクオリティを保つということは、簡単にはできないことです。最近のアニメやCGはどれも上手くできていると思うし、セットも大道具の方や職人の方の手でそれなりに質の高いものはできるのですが、娯楽映画として独創的かつ高いクオリティを出すことはなかなか難しい。一般の人の感覚では分かりにくいかもしれませんが、それ風のものが並んでいても、映画の中の世界に存在しているようには見えません。生きて見える登場人物と同じように、背景もそこに存在するものとして認識させなければならない。いくら俳優が迫真の演技を見せても、彼らを包み込む世界にリアリティがなければ、実感ある物語として捉えてはもらえないでしょう。

ーー総合的に美術を設計していく必要があるのですね。

種田:映画の世界観を一から十までコントロールできる監督は少ないだろうし、CGを作る人も建築様式のことや小道具のことを専門的に理解している方は少ないので、全体を見る美術監督が必要になってくると思います。どんなにデジタル技術が進んでも、映画に求められるものが変わっても、その作品に合ったデザインや方向性をディレクションしていく人間が必要になります。中国では、美術監督のことを美術指導や美術総監というのですが、これからは美術監督が映画固有の世界や雰囲気を監督するスーパーバイザーの役割を担っていくことになるだろうと考えています。

(取材・文=泉夏音)

■公開情報
『モンスター・ハント』
8月6日(土) シネマート新宿、シネマート心斎橋にてロードショー
監督: ラマン・ホイ
出演: バイ・バイホー、ジン・ボーラン、エリック・ツァン、タン・ウェイほか
美術総監督: 種田陽平
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