森田剛、『ヒメアノ〜ル』で日本映画の最前線へ 舞台で磨いた“尖った個性”を発揮する時

森田剛のために用意されたような役『森田』

 『ヒメアノ~ル』は森田剛の単独初主演作品であるが、いきなり連続殺人犯の役をやるというのは、彼の舞台を見てきた者からすると、以外なことではない。むしろそういう役の方が森田剛という役者は活きるのだ。

 奇しくも役名も森田である本作で森田剛は、とても自然体で、動機不透明な連続殺人を犯す男を演じている。演じるにあたり森田剛は森田の狂気的な部分を表現するにあたり、わかりやすい狂った感じを狙わずあえて感情を消すアプローチを取っている。森田は息を吐くように人を殺す。そこに特別な感情を宿していないのである。その自然体の殺意をこれだけリアリティを持って表現できる才能は非常に稀有なものだ。“森田”は、蜷川氏やいのうえ氏が指摘するような“内に秘めた疎外感”という彼の個性が存分に発揮できる役だったと言えるだろう。

 今年は蜷川氏が演出する予定だった舞台『ビニールの城』への出演も決まっており、引き続き舞台での活動が続くようだが、その稀有な才能を是非とも日本映画にも還元してほしい。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

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