『とと姉ちゃん』第三週目で描かれた、祖母と母の対立ーー母・君子の“朝ドラヒロイン”らしさ

 本編に戻ろう。今週は、母の君子と祖母の滝子の対立を娘の常子が見つめるという親子三世代の姿が描かれる。女の一代記を描くことが多い朝ドラでは祖母と母の対立を娘が見上げるという構造が度々描かれる。

 そのため、戦前(日本の伝統を生きた祖母)と戦後(戦後民主主義の自由を生きた母)の価値観の間で揺れる現在(自由であるが故に、どう生きていいのか迷っている娘)という物語構造となるのだが、滝子の登場によって、より、朝ドラらしい話になったと言える。

 面白いのは、理路整然と正論を言うのは滝子の方で、君子の意見の方が被害妄想気味で、言いがかりにしか聞こえないこと。これは、情緒不安定な役を演じることが多い木村多江と、宝塚出身の大地真央の背筋の伸びた堂々とした演技の印象もあるのだろう。

 仮に滝子の中に、次の女将候補を選ぶ目論みがあったとしても、そこは一端呑み込んで、まずは娘たちの衣食住を第一と、考えるのが普通ではないかと思ったが、「かか(母)も一人の人間なのだ」というのが、このドラマの人間観なのだろう。もっとも、あれだけ悲壮な覚悟で家を出ながら、青柳商店の隣にある仕出し屋の森田屋に住み込みで働くようになるのだから、ちゃっかりしている。

 森田屋の森田まつ(秋野陽子)は滝子とは犬猿の仲で、よりによってそこで働かなくてもと思うのだが、森田屋の二階にいる姿が滝子に見つかった際に、君子が窓を閉める姿がチャーミングで「この女、ただものじゃない」と、思わせる。当初は弱々しくて呑気な母親かと思っていた君子だが、話が進む度に、呑気さの裏側にあるたくましさを見せ始めている。もしかしたら、小橋家の中で一番、朝ドラヒロインらしいのかもしれない。

 一方、常子は滝子の得意先回りに同行することで、滝子の人を見極める力に触れることとなる。得意先を回りながら情報収集をして損得を見極める姿は、おそらく常子が編集者として営業回りをする際の指針となっていくのだろう。同時に、常子が青柳家の跡取りである若旦那の青柳清(大野拓朗)に一目ぼれして、すぐに幻滅するくだりをみても、今の常子には、人を見る目があまり無いように見える。三姉妹がままごとをする場面で常子は赤ん坊の役をずっと演じていたが、これは常子がまだ、世の中を理解していないということを表しているのだろう。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『とと姉ちゃん』
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
【NHK総合】(月〜土)午前8時〜8時15分
[再]午後0時45分〜1時ほか
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/totone-chan/

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