成馬零一の直球ドラマ評論『いつ恋』第四話
東京はもう“夢のある街”じゃない? 『いつ恋』登場人物たちのリアリティ
一方、音と急接近したのが伊吹朝陽だ。介護施設のオーナーの息子だが、母親が愛人だったため、父との間に確執を抱えている朝陽だが、同じ施設で健気に働く音に好感を持つようになっていく。最初は、ちゃらちゃらしたお坊ちゃんに見えた朝陽だが、今では深い孤独を抱えた王子様のような存在感を見せ始めている。そんな朝陽が電話越しから音に言った「君に会いたいんだ」という言葉で、第四話は終わる。
そして、第五話の予告なのだが、「第一章、完結。」のテロップにまず衝撃を受けた。
映像では、今まで同じ場面に揃うことがなかった6人が、静恵おばあちゃんの家に集まり、それぞれの気持ちをぶつけ合い涙を流す姿が映される。練が故郷に福島県に帰ることが暗示され「そして運命の日は、訪れる。」というテロップの後「それっきり、彼と会うことはなかった」という音のナレーションが入る。
劇中で3.11を描くことは予測していたが、物語の折り返し地点となる第五話に持ってくるとは思わなかった。おそらく、震災以前と震災以降でドラマ自体が大きく変わるのだろう。
参考1:『いつ恋』第一話で“男女の機微”はどう描かれた? 脚本家・坂元裕二の作家性に迫る
参考2:『いつ恋』第二話レビュー “街の風景”と“若者の現実”が描かれた意図は何か
参考3:『いつ恋』第三話レビュー 先が予想できない“三角関係”をどう描いたか?
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■ドラマ情報
『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』
2016年1月18日(月) 21:00~放送開始
出演者:有村架純、高良健吾、高畑充希、西島隆弘、森川葵、坂口健太郎
脚本:坂元裕二
プロデュース:村瀬健
演出:並木道子
制作:フジテレビドラマ制作センター
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/itsu_koi/index.html