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成馬零一の直球ドラマ評論『いつ恋』第三話

『いつ恋』第三話レビュー 先が予想できない“三角関係”をどう描いたか?

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いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう
ドラマ
成馬零一
有村架純
森川葵
高畑充希
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 恋愛ドラマについて話していると、必ず出てくるのが恋のライバルに対して「どっち派」か? というやりとりだ。『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(以下、『いつ恋』)でいうと、曽田練(高良健吾)を中心とした杉原音(有村架純)と恋人の日向木穂子(高畑充希)の三角関係がそれにあたるが、この三人の場合、今まで丁寧に描かれてきた練と音の運命の出会いや、木穂子が別の男と不倫の関係にあることから、音の圧勝に見える。

 しかし、木穂子を「都会的な洗練された大人の女性」という恋のライバルだけで片付けるのは何だか気が引ける。高畑充希が見せる節々の表情もあるだろう。特に目の演技が凄まじく、あの虚ろな目を見ていると、不倫とは別の暗いものを抱えているんだろうなぁ。と、感じる。次回の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)の主演が決定している高畑が、わざわざ演じたいと思うような役だ。この先きっと何かあるはずだ。と、思っていた。

 第三話は、そんな木穂子の姿からはじまる。練の家に置くための包丁やカーテンを買いそろえた後、コンビニの前でビールを飲む姿は、強くてしたたかな女だと思わせる。そんな木穂子に、不倫の逃げ場じゃなくて、ちゃんと「付き合おう」と言う練。しかし、その後、彼女からのメールはない。木穂子と疎遠になっている間、帰りのバスで会う機会が増えていく練と音。はじめは敬語でぎこちなく話す二人だったが、少しずつ心の距離を埋めていく。

 坂元裕二が脚本を書いた『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)で、赤名リカ(鈴木保奈美)が長尾完治(織田裕二)に電話をかけるふりをして、「もしもしカンチ?」と、存在しない電話で会話をする場面がある。存在しない電話で話す二人の姿は小学生のように幼く見えるのだが、おそらく恋愛感情と言う見えないものを描くために、見えないものを共有する子どもっぽい「ごっこ遊び」が必要なのだろう。

 この第三話では、そんな、子どもっぽい「ごっこ遊び」が次々と挿入されていく。最初は同じバスに乗り込んだ際に、曇った窓ガラスに「おつかれさま」と文字を書いてやり取りする場面、今だったらメールやLINEで済ます場面だが、手書きの文字でやりとりすることで特別な感触が生まれる。次に二人で行った保育園で、紙で作ったエビフライを食べるままごとの場面。そして、コンサートの音を外で聴くために、練はゴミ置き場を客席に見立てて「A-15とA-16です」といって音と座る。実はコンサートははじめてだと告白する音。自分もそうで「クラブも行ったことがない」という練に「今まで踊ったことがあるのはアルプス一万尺だけです」と音が言った後、二人は楽しそうにアルプス一万尺をはじめる。このシーンの恥ずかしさは尋常ではない。まるで「恥ずかしくなければ恋愛じゃない」と言わんばかりだ。しかし、木穂子について音が聞いたことで今までの温かい空気は崩れる。練の煮え切らない態度に「がっかりや」と言って怒りだす。「何で?」と戸惑う練に音はキスをして「引っ越し屋さんのこと好きやからに決まってるやん」と方言で言う。

     
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