ドラマ版『釣りバカ日誌』、なぜ若き日のハマちゃんを描く? テレ東・金曜8時枠の特殊性

 このようにドラマ版には、まだ人間関係ができあがっていないからこその面白さがあり、今後、どうなるかわかっていても、ついつい毎回楽しく見てしまう。チーフ演出には映画版を多く手掛けた松竹の朝原雄三が入っているため、映画版の空気をうまく引き継いでいる。

 それにしても、『釣りバカ日誌』のようなドラマが成立するのは、本作が放送されているテレビ東京の金曜夜8時のドラマ枠が持つ特殊性も大きいだろう。テレビ東京系のドラマというと『モテキ』や『アオイホノオ』など、「ドラマ24」を筆頭に深夜枠こそ数々の話題作を輩出しているが、夜の7時~11時のプライムタイムにおいてはなかなか、ドラマ枠が定着せずに苦戦している。高い評価を受けた『鈴木先生』を生み出した月曜夜10時のドラマ枠も、視聴率がふるわず、数本で撤退している。
 
 そんな中、例外的に成功しているのが、金曜夜8時枠である。この枠の第一作となったのは北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎が主演を務めた『三匹のおっさん』だ。三人の老人が、自警団を結成して街にはびこる悪党と戦うという本作は、子どもでもわかる勧善懲悪の物語と、他のドラマ枠ではなかなか主人公にならない高齢者の男性を主人公にしたことでスマッシュヒットとなった。それ以降、視聴ターゲットを、子どもと高齢者に絞りこむことで、独自のドラマ枠として定着している。テレビ全体の視聴者が高齢化しているとはいえ、ここまで徹底できたのはテレ東だからだろう。

 『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』も、主人公こそ20代の新入社員だが、物語の視点はスーさんを筆頭とする上司たちの側にある。そのため、かわいい若者を愛でたい熟年男性の欲望が根底にある少し変わったイケメンドラマだとも言える。つまり、ハマちゃんは、高齢男性にとっての理想の若者なのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある

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