AKB48『マジすか学園5』にやべきょうすけが出演する意味とは? 「ごっこ」から「マジ」への転換

 同作の大ヒットは、日本の映画・ドラマ界にヤンキーものブームを巻き起こすことになる。そして、そんなヤンキーブームの中で生まれたのが、『マジすか学園』だったのだ。やべがいたから『クローズZERO』は生まれ、『クローズZERO』の大ヒットによって『マジすか学園』は誕生。つまり、やべがいなければ『マジすか学園』も存在しなかったのだ。

そんなやべが『マジすか学園』に出る。繰り返すが、これは鬼ごっこに本物の鬼が出るようなものである。もちろん、『マジすか学園』に非AKBグループの役者を重要な役どころでキャスティングするということ自体が、非常に危険な賭けである。もう「学芸会の延長」では許されない。この方針の転換に伴うリスクは、制作サイドも重々承知だろうが、やべまでもキャスティングしたことに、並々ならぬ気合いが感じられる。

 その気合の表れが、冒頭で触れたキレまくるやべで幕を開ける第一話だといえるだろう。このシーンに示された通り、『マジすか5』はそれまでの 「ヤンキーごっこ」とは一線を画す、陰惨なヴァイオレンス描写とシリアスなストーリーが展開する。そのため、ここまで築いてきた世界観と、新たな要素が衝突を始めている感も否めない。しかし、それはすべて「マジ」になった代償であり、代償を支払っただけの、ドラマとしての加速があるのも事実だ。

 「ヤンキーごっこ」をやめて、マジになった『マジすか学園』。このドラマは、どういう形で決着を迎えるのか。成功か、あるいは…それはまだわからない。しかし、破壊なくして創造なし。危険な挑戦をおかしてでも、ドラマを飛翔させようとする制作陣の姿勢にはエールを送りたい。

■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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