スパイ映画『キングスマン』の見どころは? キャスト、プロット、アクションの魅力を解説

『キングスマン』の見どころは?

 9月11日(金)より、いよいよ日本での公開がスタートした、注目のスパイ映画『キングスマン』。公開初日から早くも「大ヒット御礼!」の声が上がっている本作の見どころについて、ここで改めて整理しておくことにしよう。

『キック・アス』(2010年)で旋風を巻き起こしたマシュー・ヴォーンが、再び監督・製作・脚本を務めることで、早い段階から大きな期待が寄せられていた本作。『キック・アス』同様、この映画もまた、マーク・ミラー原作のコミックを、マシュー・ヴォーンが翻案して映画化したものである。物語の中心となるのは、“背広”の語源とも言われているロンドンの仕立屋街“サヴィル・ロウ”にある高級テイラー“キングスマン“。しかし、その店の実態は、どの国にも属さない世界最強のスパイ組織だった……という荒唐無稽な設定を持つ。

 注目ポイントは、まず何と言っても、“キングスマン”の一員であり、本作の主人公でもあるハリー・ハート役を、『英国王のスピーチ』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたイギリスの名優、コリン・ファースが演じていることだ。さらに、マーク・ストロングやマイケル・ケインなど、イギリスを代表する俳優たちが脇を固めるという本気のキャスティング。さらに、そんな“キングスマン”と対決する、邪悪な思想を持ったIT富豪ヴァレンタインを、クエンティン・タランティーノの映画などでお馴染み、サミュエル・L・ジャクソンが演じているのだ。

 キャスティングの妙味に加えて、本作のプロットが内包する、さまざまな面白味についても触れておきたい。本作が映画初出演となるイギリスの新人、タロン・エガートが演じる、もうひとりの主人公エグジーは、映画『アタック・ザ・ブロック』(2011年)などにも登場する、“ブロック”と呼ばれる低所得者向けの集合団地で母親と暮らす無職の若者だ。ヒップホップ・ファッションに身を包み、街のチンピラ然とした彼が、ある日突然ハリーにスカウトされ、他の候補者たちとの熾烈な競争を潜り抜けながら、やがて“キングスマン”の一員となり、“紳士の心得”を学んでゆくというプロットは、『マイ・フェア・レディ』(1964年)や『プリティ・ウーマン』(1990年)といった映画のような、“変身物語”“成長物語”としての面白さを持っている。さらには、エグジーとハリーの“師弟物語”、あるいはキングスマンという“擬似家族”を描いた映画としての面白さもある。その背景に、イギリスならではの“階層社会”があることも、本作を観る上で留意すべきポイントのひとつだろう。

 しかし、その最大の見どころは、ほとんどノンストップで展開する、派手なアクション・シーンの数々にある。この映画のためにトレーニングを積み、新たに肉体を鍛え上げたというコリン・ファースが、ほぼスタント無しで演じたという、スタイリッシュなアクション・シーンの数々。特に終盤、たったひとりで教会に乗り込み、次々と敵を制圧してゆくその様は、まさしく圧巻のひと言だった。さらに、ポスターやチラシなどでも鮮烈な印象を残している、両足義足の女殺し屋ガゼルを演じているソフィア・ブテラのアクションにも注目したい。マドンナのワールド・ツアーに参加するなど、実は世界的なダンサーである彼女の身のこなしは、実にダイナミックかつ美しいのだった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる